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大学教養課程の数学でヤコビアン演算を学ぶ.ところが期末試験が無事過ぎるとそれ以降ほとんど使う機会に恵まれない.そうこうしているうちにやがて記憶から失われていく.完全に消え去る前に電子情報通信工学に応用してみよう.そうすることで理解がよみがえる.
しかしそんなことができる手頃な題材が身近にあるのだろうか.幾つか教科書を見ても物理的意味がぴんとくる演習が容易に見つからない.その悩み本稿が解決しよう.極めてシンプルな直流回路を例に挙げてその性能を最大化する問題に挑戦,これによりヤコビアンの基本を再認識,そして偏微分と行列式(用語)のエレガントな合わせ技を習得する.
題材とする2ポート回路を図1に示す.この回路で直流電力を伝送することを考えよう.左側ポート#1から電力を入力する.そして右側ポート#2へ出力される電力を
とする.この系で電力伝送効率すなわち電力比
を最大化したい.
出題:ポート#2に何Ωの負荷を接続すべきか?
負荷状態を調整して回路性能を最大限に引き出す操作を一般にロードプルと呼ぶ.ロードプルはコンピュータによる回路シミュレーションや可変負荷装置による実測で行われることが多い.それをここでは紙と鉛筆による手計算でチャレンジする.
まず最初に図1の回路のインピーダンス行列(Zパラメータ(用語))を求める.キルヒホッフ方程式を立てて地道にそれを解いてもちろんよい.が,もっとエレガントな方法がある.回路を図2に示す二階建て等価回路に書き換えるというアイデアだ.これを回路の直列分割と呼ぶ.分割後の各要素回路のZパラメータを素直に加算することで全体のZパラメータが
(1)
と一発で求まる.この操作をZパラメータの行列合成と呼ぶ.
Zパラメータが求まったので,電圧と電流の関係をベクトル形式で
(2)
と表せる.ここでの負号は図1において電流をポート#2から外側へ流れ出る方向に設定していることに基づく.
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