小特集 3. STEAM教育と社会課題

電子情報通信学会 - IEICE会誌 試し読みサイト
Vol.108 No.9 (2025/9) 目次へ

前の記事へ次の記事へ


STEAM教育の力

小特集 3.

STEAM教育と社会課題

STEAM Education for Solving Social Issues

大島まり 川越至桜 上田史恵

大島まり 東京大学大学院情報学環

川越至桜 東京大学生産技術研究所

上田史恵 東京大学生産技術研究所

Marie OSHIMA, Nonmember (G Interfaculty Initiative in Information Studies, The University of Tokyo, Tokyo, 153-8505 Japan), Shio KAWAGOE, and Fumie UEDA, Nonmembers (Institute of Industrial Science, The University of Tokyo, Tokyo, 153-8505 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.108 No.9 pp.861-864 2025年9月

©2025 電子情報通信学会

Abstract

 社会が急激に変化する中,グローバルな観点から新しい知を創造し,また,新しい社会的価値を創出する人材の育成が求められている.そのため,教科等を横断して知識を捉え,探究学習の場を用いて主体的・協働的に取り組むSTEAM型探究学習が重要と考えられる.効果的にSTEAM型探究学習を実践していくためには,現行の学校のカリキュラムの中で「何を学ぶか」,「どのように学ぶか」を考慮に入れて,教育の場・教材・教育方法・人員をデザインしていく必要がある.産官学民の連携の下でフォーマル教育,ノンフォーマル教育を考慮したSTEAM型探究学習の事例を取り上げる.

キーワード:教科等横断,探究学習,デザイン思考,企業連携

1.STEAM教育における社会連携

 現代,社会は混沌とし,経済が不安定で先行きが見えにくい状況である.その一方,地球温暖化,エネルギー問題,医療など,地球規模での解決が求められている社会問題も増加している.特に,日本は少子高齢化により就業人口が減少し,経済基盤である製造業からITを中心とした知識基盤へと産業構造も変化している.このように社会が急激に変化する中,グローバルな観点から,新しい知を創造し,また,新しい社会的価値を創出する人材の育成は重要である(1)

 日本では,2020年から現行の学習指導要領が小学校から高校へと順次導入された.従来の「知識偏重」から,知識を俯瞰し,答えが一つではない課題を解決するために必要な力を養い,活用する教育へと変化している.実社会・世界での課題を発見し,解決する力を身に付けるため,教科等横断的な学びを主体的・協働的に取り組む,STEAM教育が着目されている.STEAM教育の重要性及び方向性については,中央教育審議会で議論されており,また,論文や本においても論じられている(2)(4)

 STEAM教育を実践するためには,現行の学校のカリキュラムの中で「何を学ぶか」,「どのように学ぶか」を考慮に入れて,教育の場・教材・教育方法・人員をデザインしていくことが大事である.そこで,各教科の学習を大事にしつつ,横断・統合する場として,探究学習を活用するSTEAM型探究学習について取り上げる.その際に,学校現場に閉じない,社会との連携・協働が重要となる.本稿で社会連携の例として,二つの事例を紹介したい.まず,最初は,フォーマル教育の枠組みとして,東京大学生産技術研究所(東大生研)と教育委員会との連携による高等学校教育過程における「総合的な探究の時間」,「理数探究」や「理数探究基礎」における事例である.そして,二番目の事例は,中学生と高校生を対象に大学と企業が連携して行ったワークショップ及び教材開発について取り上げる.


続きを読みたい方は、以下のリンクより電子情報通信学会の学会誌の購読もしくは学会に入会登録することで読めるようになります。 また、会員になると豊富な豪華特典が付いてきます。


続きを読む(PDF)   バックナンバーを購入する    入会登録

  

電子情報通信学会 - IEICE会誌はモバイルでお読みいただけます。

電子情報通信学会誌 会誌アプリのお知らせ

電子情報通信学会 - IEICE会誌アプリをダウンロード

  Google Play で手に入れよう

本サイトでは会誌記事の一部を試し読み用として提供しています。