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STEAM教育の力
小特集 5.
メディアアートとSTEAM教育
Media Art and STEAM Education
Abstract
本稿は,芸術大学における創造性と論理的思考を育成することを目指したSTEAM教育に基づく授業展開を下に,プログラミングと芸術表現が関わり合う場における教育的な意義を考察するものである.代表作ROKUROやセンサ連動型作品の教材化など,技術と表現を融合した具体的な事例を紹介し,それらがどのように学習時のブラックボックス化を回避し,体験的な理解を可能にしているかを示した.創造的な思考と技術的な理解を同時に育成するための有効な手掛かりとなり,今後の教育におけるメディアアートの展望を提示する.
キーワード:メディアアート,プログラミング,ブラックボックス,ワークショップ
筆者は2000年,コンピュータとアートを組み合わせた学際的な分野としてのメディアアートに関心を寄せ,その両方を学ぶことのできる中京大学情報科学部メディア科学科に進学した.その頃,メディアアートという言葉はまだ一般には浸透しておらず,コンピュータによるアートと言えば3DCG(3 Dimensional Computer Graphics)を想起されることが多かった.在学中は芸術系教員の指導の下でメディアアート作品の制作に取り組み,表現に必要な電子回路,マイコン,センサ等に関する技術的課題については,工学系教員の協力を得ながら知識の補完を行った.このような学習環境は,芸術と技術の両面にわたる知識と経験を自然と養う機会となり,現在のSTEAM教育が掲げる学際的な学びの理念にも通じる構造を有していたと言える.
メディアアートの作品表現は多様であり,メディアそのもの在り方を問い直すような作品がある一方,一般的なイメージとしては,インタラクティブ性を備えた体験型作品として捉えられることが多い.鑑賞者が体験することで反応し,映像や音が変化するなど,従来の静的な鑑賞とは異なる参加型の新しい表現様式を示している.現在では,コンピュータの発展により,あらかじめ用意されたリアクションに限らず,リアルタイムに生成される作品も可能となっている.これらのように,メディアアートの制作において,コンピュータとプログラミングは重要な役割を果たしている.
現代社会では,学習環境の多様化が進み,多くの教育用ソフトウェアが無償で提供され,低コストかつ自律的に学習機会を獲得できる状況が整いつつある.更に,電子基板の少量製造が低価格で可能となり,個人レベルの教材開発のハードルも大きく下がっている(図1).
例えば,2000年代初め頃に登場したProcessing(1)やopenFrameworks(2)は,可読性の高い構文によって,アーティストやデザイナー自らがプログラミングを用いて表現することを可能とした.また,ハードウェアの領域では,ArduinoやRaspberry Piなどがセンサやコンピュータとの接続性を高め,安価で導入しやすい点から初学者にも適しており,これらはメディアアート作品の制作に広く活用されている.
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