小特集 6. STEAM教育における提言

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STEAM教育の力

小特集 6.

STEAM教育における提言

Recommendations for STEAM Education

大谷 忠

大谷 忠 東京学芸大学大学院教育学研究科教育実践専門職高度化専攻

Tadashi OHTANI, Nonmember (Graduate School of Education, Tokyo Gakugei University, Koganei-shi, 184-8501 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.108 No.9 pp.874-877 2025年9月

©2025 電子情報通信学会

Abstract

 本稿では,STEAM教育の考え方について,経済産業省が進める「未来の教室」事業実施の背景に立ち返るとともに,「A」と「E」の創造活動に基づいたSTEAM教育の実践を紹介した.実践例を通した現状から,STEAM教育が目指す実社会における問題発見・解決という学びに関して,実践の推進・普及がなされるようになってきた現状を述べた.一方で,日本社会が持つ課題を取り入れ,ディジタル化社会におけるSTEAM教育を推進・普及していく上では,Society5.0の考え方に基づいて,情報通信技術を駆使した「人にやさしい社会づくり」のための学びという点で課題が見いだされた.

キーワード:STEAM教育,情報通信技術,Society5.0,データ活用,教育基盤プラットホーム

1.は じ め に

 諸外国や日本において新たに普及・推進されてきたSTEM/STEAM教育の動向を踏まえ,筆者が2021年に「STEM/STEAM教育をどう考えればよいか」を執筆してから,4年が経過した(1).当時は,米国から流入してきたSTEM/STEAM教育をどのように考え,日本において実践したらよいか,多様な捉え方や視点での紙面が多く認められた.また,その間に学校や学校外でのSTEM/STEAM教育の実践が進み,現在に至っている.

 特に日本では,2018年に経済産業省において立ち上げられた「未来の教室」事業を通して,学びのSTEAM化が推進された(2).その後,2019年に教育再生実行会議において,教科横断的な教育としてのSTEAM教育の推進(3),更には中央教育審議会において,STEAMはSTEMにArts(デザイン,感性)とLiberal Arts(A)の考え方を加えたものであることが示された(4).これらの流れを受けて,2021年に文部科学省において,「STEM(Science, Technology, Engineering, Mathematics)に加え,芸術,文化,生活,経済,法律,政治,倫理等を含めた広い範囲で「A」を定義し,各教科等での学習を実社会での問題発見・解決に生かしていくための教科等横断的な学習を推進すること」が示された(5)

 以上の方向性に基づいて,現在,日本ではSTEAM教育の実践・普及へと進んでいると見ることができる.このようなSTEAM教育推進の流れは,現在の日本が置かれた状況を踏まえて導かれたものであるが,本当に進むべき方向は,今後,日本においてどのようなSTEAM教育を実践・普及していくかという点にある.本稿では,これまでの考え方や実践を振り返り,今後のSTEAM教育を推進していく上での現状と課題を整理する.

2.日本におけるSTEAM教育の現状

2.1 未来の教室における学びのSTEAM化を振り返る

 日本において,今後どのようなSTEAM教育を実践・普及していくかについて,その方向性を見定めるには,「STEAM」という用語が用いられた「未来の教室」事業において,当時の日本の背景に立ち返ることにある.

 「未来の教室事業」では,学びのSTEAM化を含めて,以下の三つの事業の柱を挙げている(2)

 (1)学びのSTEAM化:「知る」と「創る」が循環する,文理融合の学び

 (2)学びの自立化・個別最適化:認知特性や学習到達度等を基に,学び方を選べる学び

 (3)新しい学習基盤づくり:学習者中心,ディジタル化社会,シームレスな学校づくり


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