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解説
野外鳥類の行動解析のための視聴覚生態環境理解・解析技術
Audio-visual Ecological Analysis Technologies for Understanding Wild Bird Behavior
A bstract
野外鳥類の行動観測・解析は,生態学,モニタリング,SDGsといった観点から重要であるが,従来は人手に頼って行われていた.こうした観測・解析を効率化,持続可能なものとし,研究レベルを一段引き上げるためには,機械学習や信号処理といった工学技術が有効であり,かつ必要とされている.これまで,筆者らが中心となってこうした問題意識の下,音響処理や画像処理技術をベースに鳥類の行動観測・解析技術を開発してきた.こうした技術の解説,及び技術を用いた鳥類行動観測・解析の活用例と得られた知見を紹介する.
キーワード:野外鳥類,行動観測,行動分析,ロボット聴覚,視聴覚処理,生態学
野外鳥類研究は,野生動物研究の一分野である.近年では,電子機器を用いた観測研究が増加しているものの,依然として双眼鏡やノートを用いた熟練観察者による職人的な手法が主流を占めている.実際,図1に示すように,熟練観察者は多少の誤差を含みつつも,複数の個体を瞬時に捉え,鳥種を識別し,位置や行動を即座に記録することが可能である.こうした技能は,現時点における一般的な民生用電子機器では容易に代替できない.しかし,このように個人の技能に依存した観測には,観察者ごとの能力差や人員確保の難しさ,取得データの量・質の限界といった課題がある.実際,ICレコーダによって録音データが蓄積されているにもかかわらず,解析が追いつかず未活用のままとなっている例も少なくない.また,録音音声だけでは,たとえ熟練観察者であっても,個体の位置や動きを正確に特定することは困難であり,音声分析と位置情報の統合的な研究は限定的である.一方,電子機器を用いることで,定量的で高精度な大量のデータの取得が可能となることから,こうした技術に対する潜在的な需要は大きい.特に鳥類は視覚・聴覚の双方が高度に発達しており,空中・地上・水上といった多様な環境に適応しているため,観測機材の汎用性を評価する対象としても優れている.更に,音声によるコミュニケーション能力を有する種が多いため,音響を用いた観測との親和性も高い(1).現在,先端的な観測機器の導入も一部で試みられているが,機材コストや運用に必要な技術的知識の習得が障壁となり,現場での普及は限定的である.本稿では,こうした背景を踏まえ,熟練観察者の技能を補完・代替し得る技術として,複数のマイクロホンアレー(マルチマイクロホンアレー)及びカメラを用いた鳥類観測技術の構築と,その応用事例について紹介する.
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