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解説
バーチャルアバタがもたらす新たなユーザ体験
New User Experiences Brought by Virtual Avatar
A bstract
近年,生成AIの進化により,仮想のキャラクタが人間に対して応対するバーチャルアバタへの期待が高まっている.本稿では,バーチャルアバタ市場の成長要因やトレンドを俯瞰し,関連技術や研究動向を解説する.具体的な事例として,KDDIがGoogle Cloud技術及び5G等の低遅延特性を活用して開発したバーチャルアバタを紹介する.この事例では,リアルタイムで顔の特徴を抽出し,3Dで表情を再現し,音声合成でユーザとの会話を実現している.
キーワード:生成AI,キャラクタ,バーチャルアバタ,5G
AR(拡張現実)やVR(仮想現実),MR(複合現実)といった技術の総称であるXRの進歩,及び大規模言語モデル(LLM)等の生成AI技術の進化に伴い,バーチャルアバタ市場の急速な成長が予想されており,2023年には181.9億USドルであった市場規模が2024年から2030年にかけて49.8%のCAGRで成長すると推定されている(1).
インターネットユーザ数の増加に伴い,バーチャルアバタ技術は,動画像視聴やオンラインゲームの可能性を広げ,ユーザに新たなエンターテイメント体験をもたらすといった活用の可能性がある.また,労働力不足やDX(ディジタルトランスフォーメーション)により実店舗等で導入が進んでいるセルフ端末の使い勝手向上の観点でも,バーチャルアバタとの対話により,複雑な端末操作を伴うことなく,‘ひと’と対話している感覚で各種システムを操作可能となるなど,ディジタルデバイドの是正への貢献が期待されている.
日本においては2030年にはサービス業を中心に644万人の労働力が不足すると予想されている(2).また「おもてなし」の概念が浸透しており,減っていく労働力の中でいかにユーザの高い期待に対応していくかといった課題が存在する.
そのような状況において,遠隔地からでも対応可能なバーチャルアバタを通じたユーザ支援サービスが労働力の減少と高齢者支援のニーズの高まりに対処する魅力的なソリューションとなる可能性がある.
バーチャルアバタを活用したサービスは,実店舗での接客やカウンセリング,オンライン上でのコミュニケーションをはじめ,様々なユースケースでの応用が考えられる.‘ひと’との対面やテレビ電話でのコミュニケーションに比べて,表情や仕草,発話音声が不自然である等,モーダル(視聴覚)に関する課題,インタラクティブな対話時に応答の体感遅延を生じる等,システム制約に関する課題の,大きく二つの課題が顕在化している.一方で,‘ひと’と対話する場合と比べて気軽に話しかけやすい,リラックスして聞きたいことが聞ける等の利点があることが報告されている(3),(4).
視聴覚に関する課題について,アバタの外見と話しやすさに関する研究として,利用シーンや対話内容に応じて親しみを感じるアバタに関する知見等が報告されている(5).外見の印象を評価するだけでなく,具体的なカウンセリング場面を想定し,話しやすいと感じる外見を明らかにする研究報告(6)もなされており,バーチャルアバタの実利用に向けた研究開発が活発に行われている状況である.
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