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研究開発の投資ポートフォリオ

マネジメントとバーベル戦略

Investment Portfolio Management and Barbell Strategies for R&D

水落隆司 大髙雅貴

水落隆司 正員:フェロー 三菱電機株式会社研究開発本部

大髙雅貴 三菱電機株式会社研究開発本部

Takashi MIZUOCHI, Fellow and Masaki OTAKA, Nonmember (Corporate R&D Group, Mitsubishi Electric Corporation, Tokyo, 100–8310 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.109 No.1 pp.26–30 2026年1月

© 2026 電子情報通信学会

Abstract

科学技術とビジネスの近接化が進む中,研究開発に大胆な投資を実行し,事業化によるリターンを最大化するための新しい研究開発投資ポートフォリオを提案する.割引キャッシュフロー法(Discounted Cash Flow)を用いた投資評価に基づき,技術成熟度や事業成熟度に応じた割引率を設定し,将来価値を算出することで投資の意思決定を行う.リスクを分散し,ハイリスク・ハイリターンの研究テーマとローリスク・ローリターンのテーマを組み合わせるバーベル戦略について説明する.

キーワード:研究開発,投資ポートフォリオ,バーベル戦略,DCF法,現在価値,割引率

1. は じ め に

サイエンスとビジネスの近接化が進み,ディープテックへの巨額の投資により,巨大ビジネスが同時並行で生み出される現象が世界中で起きている.

我々が対象とする研究テーマには,まだ基礎科学の域にあり,実現までに何年もかかるフュージョンエネルギーのような技術もあれば,激しい開発競争で日々進化を遂げ社会実装が進む生成AIのような技術もある.これら多くの研究テーマから,どれを選び,それに対する研究開発費をどのように割り当て,出口である事業から得られる財務リターンをどのように最大化するのかについて,戦略を築く必要がある.

本稿は,非財務価値である研究開発を,割引キャッシュフロー(DCF: Discounted Cash Flow)法(1)(用語1)を用いて現在の財務価値に置き換え,バーベル戦略(2)(用語2)に基づくポートフォリオにのっとり研究開発投資の意思決定を行うマネージメント方法について提案するものである.

2.でDCF法について解説し,3.で,DCF法を用いた事業価値の具体的な算出例を説明する.4.で,新しい投資ポートフォリオの考え方を提案し,5.でバーベル戦略に基づく研究開発投資の意思決定方法について述べる.

2. 現在価値の算定方法

DCF法は,図1に示すように事業が将来生み出すフリーキャッシュフローを現在価値(PV: Present Value)に換算する方法であり,その理論(1)が発表された1938年以来,広く経済活動の現場で活用されてきた.

フリーキャッシュフローと現在価値

ここで年目のフリーキャッシュフローを,割引率をとした場合,年目までの事業の現在価値は式(1)で求められる.

割引率の大小で現在価値は大きく変わる.いかに将来価値が大きくとも,例えばが30%だった場合,は10年で1割を下回るまで減少してしまう.割引率が研究開発から事業化に至る成功確率だと考えれば,経験則に一致するのではないだろうか.


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