
マイクロ波技術・EMC設計の機械学習活用
小特集編集にあたって
近年,AI(Artificial Intelligence)が大きく注目を集め,様々な分野でAIを活用した研究開発が進んでいる.このことは電子情報通信学会会員の読者には釈迦に説法かと思う.アナログ技術の要素が強いマイクロ波工学及びEMC(Electromagnetic Compatibility)の分野も例外ではない.筆者は,2015年に開催されたIEEE EMC-2015で初めてAIを活用したEMC設計の発表を聴講したことを記憶している.以来,マイクロ波工学及びEMCの分野でAIを用いた設計手法は多くの研究機関で研究されており,近年,急速に進展している.本小特集では,AIを活用した最新事例について紹介頂く.
第1章では,室蘭工業大学の辻寧英様らから,光・ミリ波デバイスの構造最適設計のため,ベイズ最適化と共分散行列適応進化戦略を寸法最適化,形状最適化,トポロジー最適化に適用した最適設計例を紹介頂く.
第2章では,同志社大学の大平昌敬様らから,深層強化学習で構築されたエージェントによるマイクロ波帯域フィルタ(BPF : Bandpass Filter)の自動設計手法について紹介頂く.提案手法を用いた共振器3段または5段のマイクロストリップBPFの自動設計例を紹介頂く.
第3章では,東北大学の室賀 翔様らから,物理モデルとAIを融合させた電磁ノイズ抑制シート(NSS : Noise Suppression Sheet)の設計手法について紹介頂く.提案手法を用いたプリント基板のマイクロストリップ線路からの雑音を抑制するために最適なNSSの設計事例を紹介頂く.
第4章では,静岡大学の關根惟敏様から,EMC設計に応用可能な幾つかの機械学習モデルを紹介頂く.車載ワイヤハーネスを単純化した多導体伝送線路の問題へ機械学習モデルを応用し,相互キャパシタンスやクロストーク電圧といった線路を特徴付ける値が推論できることと,それらの機械学習モデルを説明するための手法を適用することで,モデルへの理解や信頼性が高められることを解説頂く.
第5章では,日本航空電子工業株式会社の池田浩昭様から,ニューラルネットワークを使ってプリント基板の物理情報から3 m遠方の放射電界の最大値を予測する回帰モデルと,その予測性の検証について紹介頂く.
第6章では,神奈川大学の陳春平様らから,人工ニューラルネットワーク(ANN : Artificial Neural Network)を小形フランジ付き開放端同軸プローブ測定法に適用することにより,現場で電波吸収体の複素誘電率及び複素透磁率をリアルタイムかつ破壊せずに測定する手法を紹介頂く.提案手法について,テストデータによる数値実験及び測定実験による検証を紹介頂く.
第7章では,パナソニックインダストリー株式会社の末永寛様から,車載機器,及びハーネスの近傍雑音から,EMC試験規格条件下での放射雑音を予測する機械学習(ML : Machine Learning)モデルについて紹介頂く.未学習サンプルを用いた予測性能の検証について紹介頂く.提案手法の実用化に向けた取組みとして,アプリケーションへの実装などを紹介頂く.
最後に,御多忙の中,執筆に御協力頂いた執筆者の皆様に深く感謝致します.また,本小特集の提案・調整などに御協力頂いた編集チームの皆様には,この場をお借りして感謝申し上げます.小特集編集チーム
川上 雅士 庄司 雄哉 吉田 知也 雨宮 智宏 風間 拓志 菊地 健彦 甚野 裕明 杉坂純一郎 藤田 和広 古市 朋之 美馬 覚 森本 佳太 和田 平

