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深層強化学習の援用によるマイクロ波フィルタの自動設計
A Deep-reinforcement-learning Assisted Automatic Microwave Filter Design

深層強化学習で構築されたエージェントによるマイクロ波帯域フィルタ(BPF)の自動設計手法について紹介する.一般に深層強化学習ではエージェントが試行を繰り返し,報酬を最大化する行動を学習する.それと同様に,本稿では設計者が試行錯誤しながら設計技術を習得する過程を計算機上で再現し,BPF自動設計用エージェントを構築するためのフレームワークについて説明する.また,その過程で実行するBPF特性計算の計算時間を劇的に削減するのに有効な順モデル(サロゲートモデル)についても述べる.共振器3段または5段のマイクロストリップBPFの自動設計例を通して,大きく離調した周波数特性からスタートしても,エージェントによって自動的かつ非常に高速に目標仕様値を満足する構造パラメータが得られることを示す.
キーワード:マイクロ波フィルタ,自動設計,深層強化学習,サロゲートモデル,人工ニューラルネットワーク
1. は じ め に
帯域フィルタ(BPF:Band-Pass Filter)をはじめとするマイクロ波回路の設計では,いまだ設計者の経験やノウハウがものを言うことが多く,設計の自動化は急務である.与えられた回路構造(物理パラメータ)からその電気特性(電気パラメータ)を求める電磁界解析を「順問題」とするならば,所望の特性や設計仕様(電気パラメータ)から回路構造(物理パラメータ)を決定するマイクロ波回路設計は「逆問題」である.この逆問題を解く手法は一般に存在しないため,マイクロ波回路設計では順問題を何度も繰り返し解きながら設計する必要がある.また,設計の一助となる等価回路モデルだけでは,電磁界の振る舞いを厳密には表現しきれないことにも問題の要因がある.
そこで設計の高速化を図るために,人工ニューラルネットワーク(ANN:Artificial Neural Network)(用語1)を用いたマイクロ波回路の自動設計やモデリングが検討されてきた(1),(2),(3),(4).その一つに,ANNで構築されたサロゲートモデル(Surrogate Model,代理モデルや代替モデルともいう)を用いた設計手法がある.電磁界シミュレータの代わりに,与えられたマイクロ波回路の構造パラメータからSパラメータの周波数特性を出力するサロゲートモデルは,順モデル(Forward Model)と呼ばれる.順モデルを用いれば瞬時に特性計算が実行でき,設計時間の大幅な短縮につながる.しかし,順モデル自体が設計を行うわけではないため,構造設計には最適化アルゴリズムなどが別途必要となる.
それに対して,ANNで構築された「エージェント」が設計者の代わりにBPFやアンテナを自動的に設計する手法がある(5),(6),(7),(8),(9).この手法では,エージェントが設計対象の回路の構造パラメータを変化させ,その特性を評価しながら設計目標を達成するように,自動で構造パラメータを調整する.このエージェントを構築するために深層強化学習(DRL:Deep Reinforcement Learning)が用いられている.その過程は正に人間が試行錯誤しながら,最終的に設計仕様を満たすように構造パラメータを得るようなものであり,計算機による設計技術の獲得と言える.
本稿では,筆者らが提案している,BPF自動設計用のエージェントを構築するためのDRLのフレームワークについて解説する(8),(9).本DRLでは,異なる設計仕様(通過域の中心周波数や比帯域幅)を与えても,エージェントが自動的にBPFの構造パラメータの設計ができるようになることを目的とする.DRLにおいても特性計算の時間短縮には順モデルが極めて有効であり,その構築方法についても簡単に紹介する.自動設計の一例としてマイクロストリップBPF設計用エージェントを構築し,人の手を一切介さずに,与えられた設計仕様を満たすように,エージェントが自動的にBPFを設計できることを示す.

