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電磁気ベースモデルとAIを利用した電磁雑音抑制シートの設計手法
A Design Method for Electromagnetic Noise Suppression Sheets through the Combination of Electromagnetics-based Models and AI

物理ベースモデルとAIを統合した新しい電磁雑音抑制シート(NSS)の設計手法を提案した.初めに,NSSを実装する基板における近傍界マップの機械学習を利用して,磁界源を検出して等価モデル化する.次に,NSSと検出した磁界源の電磁気的な相互作用を等価回路モデルと遺伝的アルゴリズムを用いて推定し,目標仕様を満たすNSSの材料パラメータを探索する.この手法により,従来は経験則に頼っていたNSSの材料選定や実装指針を定量化できる可能性を示した.
キーワード:電磁雑音抑制シート,協調設計,電磁気ベースモデル,機械学習
1. は じ め に
近年の電子機器の高機能化や通信技術の発展に伴い,不要な電磁波を抑制する電磁干渉対策の重要性が増している.その対策手法の一つとして,磁性材料や導電性材料を樹脂などに分散させた電磁雑音抑制シート(NSS:Noise Suppression Sheet)が利用されている(1).
NSSは,雑音源や伝搬経路となる回路,素子や配線の近傍に配置することで,雑音エネルギーを熱に変換する.その性能は,NSSの電磁特性に加えて,NSSと回路,素子,配線間における様々な電磁気的な相互作用によって変化する.その結果,NSSの性能予測は難しく,その材料選定や実装指針の最適化は,経験則や試作と測定の繰り返しによるアプローチに大きく依存している.これは開発期間の長期化やコストの増大を招いている.更に,NSSの材料開発者には,実装に関する情報がフィードバックされない場合が多く,新規デバイスに対応した材料開発は,手探り状態で実施されているのが現状である.
この課題を解決するためには,NSSの実装前に雑音対策効果を予測してNSSの仕様を決定する,いわゆるフロントローディング設計への転換が不可欠である.本稿では,その具体的な例として,物理モデルとAIを融合させた新しい設計プロセスについて説明する.図1にその全体像を示す.

このフローチャートは,EMC試験において規格値を超過したという問題から始まる.初めに,①において,雑音対策の対象とするプリント回路基板(PCB)近傍の磁界分布から,雑音源や伝搬経路の電磁気的な情報を物理的に意味のある「等価電磁界モデル」で表現する.次に,②でNSSを「等価回路モデル」で表現し,①で同定したモデルとの相互作用を推定することにより,その雑音抑制性能を予測する.そして,目標値を達成するためのNSSの仕様を探索し,提案する.最後に,提案の仕様のNSSを実装し,再試験で効果を検証する.
このようにして,雑音源や伝搬経路の情報と,対策部材であるNSSの情報を直接的かつ定量的に結び付けることが可能になる.これは,回路設計者と材料設計者が共通の指標で議論し,開発を連携して進める「協調設計」の実現に向けた重要な一歩となることが期待される.

