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タイトル4.

EMC設計のための機械学習モデルと説明可能性

Machine Learning Models for EMC Design and Their Explainability

關根惟敏

關根惟敏 正員 静岡大学工学部機械工学科

Tadatoshi SEKINE, Member (Department of Mechanical Engineering, Shizuoka University, Hamamatsu–shi, 432–8561 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.109 No.3 pp.181–184 2026年3月

© 2026 電子情報通信学会

本稿では,EMC設計に応用可能な幾つかの機械学習モデルを紹介するとともに,その説明可能性について述べる.特に,車載ワイヤハーネスを単純化した多導体伝送線路の問題へ機械学習モデルを応用し,相互キャパシタンスやクロストーク電圧といった線路を特徴付ける値が推論できることを示す.そして,それらの機械学習モデルを説明するための手法を適用することで,モデルへの理解や信頼性が高められることを確認する.

キーワード:車載ワイヤハーネス,多導体伝送線路,回帰モデル,畳込みニューラルネットワーク,説明可能なAI

1. ま え が き

EMC設計の現場では,測定や数値シミュレーションの結果を利用した検証が広く行われている.測定は現実に即した結果が得られる一方,時間的・経済的コストが高く,多くの回数が必要な場合は莫大な時間と費用を要する傾向がある.そのため,最終的には測定結果が必要になるとしても,ある程度の見積もりや測定範囲の限定を事前に実施し,効率的な検証を行うことが重要である.従来はこのような問題を解決するため,より短時間で結果を得ることができる各種のシミュレータが用いられており,欠かせないツールの一つとなっている.しかし,近年の製品内部や周囲の電磁環境は複雑多様化してきており,シミュレータで扱う構造物や物理現象の難化が進んでいる.結果として,シミュレータであっても長大な解析時間や大規模な計算資源が必要となるため,限られた開発期間で設計を行う現場のひっ迫を招いている.

このような状況の下,EMCの分野でも機械学習を活用して従来の作業を高速化・効率化する技術に注目が集まっている(1).性能の良い機械学習モデルを得るためには,大量のデータや訓練のための時間を要する一方,訓練済みの機械学習モデルは入力から出力を非常に高速に計算することができるため,数値シミュレーションの代替手法としても期待されている(2),(3),(4),(5),(6).しかし,機械学習モデルは一般に,精度の高いモデルほど内部構造が複雑になる傾向があるため,モデルの精度が良かったとしても,どのように入力と出力を結び付けているのかが分からないブラックボックスとして使用されることが多い.そのため,モデルの妥当性を他者に説明することや,確かな根拠に基づいて納得・信頼して使用することができなくなるという問題が生じる.この問題を回避するためには,ブラックボックスとなっているモデルを説明し,使用者が理解できる状態にする必要がある.このように機械学習モデルの説明するための手法として,説明可能なAI(XAI:Explainable Artificial Intelligence)という考え方がある(7),(8),(9).XAIの手法を用いると,対象の機械学習モデルがどのような根拠に基づいて出力を決定したのかが説明できるようになる.そのため,使用者がモデルを信頼して使用できるようになるだけでなく,モデル自身の欠点やデータセットの改善点が明確になり,それぞれをより良いものに修正する際の重要な情報となる.結果として,より性能の高いモデル,つまり推論精度が高いモデルの導出や問題に適切なデータセットの作成ができ,効果的かつ効率的な機械学習モデルの運用が可能となる.本稿ではまず,EMCや周辺分野で応用されている機械学習モデルについて紹介する.その後,多導体伝送線路に関連した問題を具体例として,機械学習モデルの説明可能性について概説する.


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