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Vol.109 No.3 (2026/3) 目次へ

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タイトル6.

ANNの応用による電波吸収体の複素電磁パラメータの現場測定法

In-Situ Characterization of Complex Electromagnetic Parameters of Electromagnetic Absorbers Using ANN

陳 春平 穴田哲夫

陳 春平 正員:シニア会員 神奈川大学工学部電気電子情報工学科

穴田哲夫 正員 神奈川大学工学部電気電子情報工学科

Chun-Ping CHEN, Senior Member and Tetsuo ANADA, Member (Department of Electrical, Electronics and Information Engineering, Kanagawa University, Yokohama–shi, 221–8686 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.109 No.3 pp.191–195 2026年3月

© 2026 電子情報通信学会

無線通信機器の急増に伴い発生する電磁干渉問題の解決手段の一つとして,電波吸収体は屋内外で広く利用されている.そのため,電波吸収体の性能変化を定期的に観測・評価することが重要である.本稿では,小形フランジ付き開放端同軸プローブを用いた,現場で電波吸収体の複素誘電率及び複素透磁率を同時にモニタリング・評価するための測定法を紹介する.従来の数値計算法に基づく測定法と比較して,人工ニューラルネットワーク(ANN)を適用することで測定時間が大幅に短縮され,現場での迅速な測定への応用が可能となっている.

キーワード:ANN,複素誘電率,複素透磁率,開放端同軸プローブ,非破壊測定法

1. は じ め に

サイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させたSociety 5.0の実現には,自動運転制御の中核を担う超低遅延無線ネットワークや衛星通信,更にIoT・AI社会を支える5G・Beyond 5Gといった新しいワイヤレス通信技術の活用が不可欠である.多数の無線通信システムが同時に利用されることで,異なる無線システム間の電磁波干渉が解決すべき課題となる.不要放射を抑制する有効な手段として,電波吸収体が広く利用されている.特に屋外で使用される電波吸収体(1)では,環境条件の変化に伴って電磁特性が変化する可能性があるため,継続的にモニタリングし,定期的に評価することが重要である.

従来の導波管などを用いた電波吸収体の複素電磁パラメータ測定法は,試料の形状加工を必要とするため(2),現場での測定には適していない.一方,開放端同軸プローブは開放構造であるため,測定時に試料の形状加工を必要としない.そのため,開放端同軸プローブに基づく測定法は,現場での非破壊・リアルタイム測定法として注目を浴びている.

開放端同軸プローブで直接測定できるのは試料の反射係数であるため,複素誘電率及び複素透磁率を推定するには,反射係数と複素電磁パラメータの理論的関係(理論モデル)を構築する必要がある.スペクトルドメインモデル(SDM:Spectral-Domain Model)(3),(4)はシート状試料の測定に有効であるが,試料及び同軸プローブのフランジが無限大であると仮定できない場合には適用できない.したがって,小形フランジ,サイズが小さい試料,非平面状の試料の測定にはSDMモデルは使用できない.一方,有限要素法(FEM)や有限差分時間領域法(FDTD)などの数値計算手法により,有限サイズの試料や小形フランジ,非平面状試料をモデリングすることは可能である.しかし,これらの手法に基づいた3D理論モデルは,複素誘電率及び複素透磁率を同時に推定する反復計算に数十時間以上を要するため,現場でのリアルタイム測定には実用的でない.

本稿では,この問題を解決する手段として,人工ニューラルネットワーク(ANN:Artificial Neural Network)(5),(6),(7)モデルを,小形フランジ付き開放端同軸プローブを用いた電波吸収体の複素電磁パラメータ測定に適用する.学習用データセットはFEMなどの数値計算により生成されるが,学習済みANNモデルは高速な計算が可能であり,電波吸収体のリアルタイムモニタリングや定期的評価など,現場での応用に適している.


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