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タイトル7.

近傍雑音から放射雑音を予測する機械学習モデル

Machine-learning Model Predicting Radiated Emission from Near-field Noise

末永 寛

末永 寛 正員 パナソニックインダストリー株式会社モノづくり革新センター

Hiroshi SUENAGA, Member (Manufacturing Innovation Center, Panasonic Industry Co., Ltd., Katano–shi, 576–0021 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.109 No.3 pp.196–201 2026年3月

© 2026 電子情報通信学会

EMC分野のシミュレーション活用は,伝導雑音等について高精度な予測結果が報告されているが,放射雑音については十分な予測精度に至っていない.これは,試験環境含めた大規模かつ緻密なモデルの構築に高いスキルと膨大な計算コストを要することなどが要因である.このため,電子機器の開発では,EMCサイトで放射雑音の評価と対策が繰り返され,開発コストと開発期間が問題となっている.本研究は,車載機器の開発効率化を目指し,属人的なオペレーションスキルが不要,かつ試験条件下における放射雑音特性を短時間で予測可能な機械学習モデルを構築した.本稿では,学習データの生成から,機械学習モデルの構築と予測性能検証,更にはアプリケーションへの実装まで報告する.

キーワード:近傍雑音,放射雑音,機械学習,ニューラルネットワーク,EMC

1. は じ め に

計算機の進化により,EMC(Electro-Magnetic Compatibility,電磁環境両立性)の分野でシミュレーションや機械学習の活用が広まっている.

シミュレーションにおいては,回路解析から,CPS(Chip Package System)レベルの雑音解析まで,特に伝導雑音について高精度な予測が報告されている(1),(2).しかし,EMC試験規格条件における実機の放射雑音に関しては,シミュレーションで十分な予測精度に至っていない(3).これは,試験環境を含めた大規模かつ緻密なモデルの構築に高いスキルと膨大な計算コストを要し,かつ実機雑音の表現に必要なモデルの入手が困難であることが要因である.

一方,ニューラルネットワーク(NN)や遺伝的アルゴリズムなど機械学習(ML:Machine Learning)の適用については,デカップリングコンデンサの選定,高速信号波形の予測(4),(5)などが報告されている.また,本研究の先行研究では,特定の配線形状や回路構成を有する複数のプリント基板を対象に,近傍雑音から遠方放射雑音を予測する機械学習モデルが報告されている(6)

本研究は,前述したEMCサイトでの電子機器の雑音対策と評価の課題を改善し,開発効率を向上することを目的とし,車載機器,及びハーネスの近傍雑音から,試験規格条件下での放射雑音を予測するMLモデルをNNで構築し,未学習サンプルの放射雑音の予測を可能とした(7),(8).更に本技術の実用化に向け,ユーザのオペレーションスキル依存性が低く,短時間で予測が可能なアプリケーションの実装まで行った.

2. 基礎技術の構築

構築するMLモデルは,未学習の車載機器の放射雑音の予測を目的とする.車載機器は機種ごとに雑音特性が異なるため,多様な車載機器の雑音特性をカバーした学習データを効率的に生成する必要がある.このため本研究では,多彩な雑音特性を表現可能なTEG(Test Element Group)セットを用いて近傍雑音と放射雑音の代表データを取得し,数値演算によるサンプル数と雑音レベルのダイナミックレンジの拡大により学習データを生成し,機械学習に用いる.本章では,放射雑音予測帯域としてバイコニカルアンテナ帯域(30~300MHz)を対象に基礎技術(MLモデルのプロトタイプ)を構築する.


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