1.
学会の基礎を支え境界領域を開く30年
Three Decades of Supporting Scholarly Foundations and Exploring Interdisciplinary Domains
1. は じ め に
電子情報通信学会がソサイエティ制を導入してから30年間が経過した.基礎・境界ソサイエティは,移行期のグループ制の折から,ほかのソサイエティとは異なり,文字どおり学会全体が関わる「電子」,「情報」,「通信」の研究分野の基礎を幅広く,力強く支えていくソサイェティである.また,これらの分野間の境界領域を掘り起こし,新たに先進的な領域を産み出していくことを担って活動を進めてきている.
本稿では,このような重要なミッションを担った本ソサイエティが,30年間でどのような活動を行い発展してきたかについて振り返る.この30年間に,学会に関連した技術の進展により,我々の社会生活は大きく変貌を遂げてきている.当時,一般社会におけるインターネット普及率は1%にも満たず,Googleも創業前で,NVIDIAのGraphics Processing Unit(グラフィックス処理装置)もなく,スマートフォンもタブレットも利用されていない状況であった.学会関連技術である,有線・無線の情報ネットワーク技術,電子情報システムの集積化設計・実装技術,人工知能技術,量子情報処理技術などの革新的な進展の結果,現在では,学会が取り扱う技術分野も当時からは大きく変化している.関連技術を情報インフラとして普段から利用する一般の方々の数は飛躍的に伸び,社会に対する学会の貢献への期待は大きく増してきているといえる.
2. ソサイエティ体制の変化
ソサイエティが導入される更に以前,1980年に「学会基本問題検討委員会」において,学会の在り方,組織・運営の基本に遡った問題点の洗い出し,並びに学会の活動・発展に関する総合的な検討が開始され,当時学会全体として,会誌・論文誌の在り方,研究専門委員会の発展方策や改廃,会員へのサービス体制などが議論された.1982年に取りまとめられた答申には,(1)ソサイエティ制度導入の意義,(2)学会の新組織案,(3)ソサイエティの体制と活動が記されている.1985年度からグループ制をスタートさせ,将来構想実施検討委員会での議論を経て,1995年度からソサイエティ制が実施され,正式に基礎・境界ソサイエティが発足した(1).
2.1. 発足当時の基礎・境界ソサイエティ
ソサイエティ制の施行にあたって,通信,エレクトロニクス,情報システムのソサイエティは,それぞれ本会の中核となる情報通信や電子工学に関して実績のある研究専門委員会群を取りまとめて,比較的円滑なスタートが可能であった.一方,基礎・境界ソサイエティに関しては,回路とシステム,情報理論,非線形問題など,長きにわたり学会が関係する分野全般の基礎を担う学問領域を力強く支え発展してきていたが,検討当時においても「将来的には三つ程度のソサイエティの母体となる」ことが期待されていた.このような多岐にわたる専門分野を持つソサイエティとしてESSは発足することとなったため,サブソサイエティという,他のソサイエティにはない制度を導入した.
平成7年度の発足時には,システムと信号処理,情報通信基礎,音響・超音波の三つのサブソサイエティと13の研究専門委員会でスタートを切った.その時期から,非線形理論とその応用(NOLTA),回路とシステム国際学術研究集会(JTC-CSCC),情報理論とその応用シンポジウム(SITA)という学術研究集会の運営に深く関わり,これらの会議は,会議名称や開催母体の変更があったものの,現在でも学会の代表的な活動として,各学術分野での学会プレゼンス向上に貢献している.
2.2. 基礎・境界ソサイエティの発展と現状
前述のように,基礎・境界ソサイエティは,基礎理論からシステム構成等まで,学会の主要技術分野の屋台骨を支えつつ,時代の要請に即応した新しい研究分野を生み出していくミッションの下,精力的に活動を続け発展してきている.

