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Vol.109 No.3 (2026/3) 目次へ

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タイトル3.

エレクトロニクスソサイエティ30年の回顧と展望

──ソサイエティ制の下で築かれた歩みと未来──

30 Years of the Electronics Society: A Retrospective and Outlook

エレクトロニクスソサイエティ会長 松尾慎治

エレクトロニクスソサイエティ前会長 永田 真

1. は じ め に

電子情報通信学会にソサイエティ制が導入されてから30年が経過した.この制度は,急速に発展する科学技術と社会の変化に柔軟に対応し,学会の機動力を高めるために生まれたものである.その中でエレクトロニクスソサイエティ(以下,ES)は常に中心的な役割を担ってきた.材料,デバイス,回路,システムなど多岐にわたる分野を包括し,学会内でも最も幅広い多様性を有するESは,日本のエレクトロニクス研究を支え,世界へと発信してきた.

制度発足を控えた1994年1月号の会誌における会報「電子情報通信学会 新時代の幕開け ―ソサイエティ制の発足―」を読むと,ソサイエティ制は「大艦巨砲型の学会から,専門性と機動力を備えた船団へ」という比喩で説明されている.巨大で一枚岩の学会運営から,分野ごとに自律性を持つ複数の船を束ねた連合体へと変わることで,新しい学術領域や産業の変化に迅速に対応することを目指した.エレクトロニクス分野は国際競争が激しく,新技術が次々と誕生する領域であったため,この新制度がもたらした柔軟性はとりわけ大きな意味を持つことになった.

この30年を振り返ると,ESの活動は単なる研究発表の場にとどまらず,人材育成や国際交流,産学連携を通じて社会や産業界へも大きな影響を与えてきた.論文誌の刷新,研究会の活性化,国際連携の強化など,数多くの試みが実を結び,ESは世界的な研究者ネットワークの一翼を担う存在へと成長した.一方で,分野の細分化や財政的不均衡,国際競争の激化など,制度が抱える課題も明らかになってきた.

本稿は,会誌の小特集記事としての枠を超え,記念論考・読み物としてソサイエティ制30年を振り返る.制度導入の背景,ESが歩んできた道のり,そこから得られた成果と教訓,そしてこれからの展望を,多角的かつ丁寧に描くことを目的とする.歴史の検証と未来への展望を一体的に示すことにより,会員の皆様が学会の意義を再確認し,次世代へのバトンを渡すための指針となれば幸いである.

2. ソサイエティ制導入とエレクトロニクス分野の背景

2.1. 1990年代初頭の学会と社会状況

1990年代初頭,電子情報通信分野は大きな転換期を迎えていた.半導体技術の微細化はムーアの法則に沿って進み,超LSIの集積度は飛躍的に高まっていた.光通信インフラは高速化と大容量化が求められ,電子デバイスは小形化と高性能化の両立が急速に進んでいた.更に,移動体通信の普及を背景にマイクロ波技術の重要性も高まり,無線通信インフラの進展を強力に支える要素となっていた.社会全体が情報化社会へと向かう中で,研究分野は急速に細分化し,新しい学術領域が次々と誕生していた.

このような状況の中で,学会組織の在り方にも変革が求められていた.当時の研究グループ制では,新しい分野への対応が遅れがちであり,会員のニーズを十分に満たすことが難しくなっていた.会員数は飽和状態にあり,特に若手研究者の加入が減少していたことは深刻な課題だったようである.新しい技術分野に関心を持つ若手が,情報処理学会や応用物理学会など隣接学会に流出する傾向も強まり,電子情報通信学会の存在感が揺らぐ懸念があると記載されている.


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