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Vol.109 No.3 (2026/3) 目次へ

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タイトル5.

NOLTAソサイエティの発足と10年の歩み

Founding of NOLTA Society and Its Decade of Progress

NOLTAソサイエティ会長 関屋大雄

1. は じ め に

NOLTAソサイエティ(NLS:Nonlinear Theory and Its Applications)は,電子情報通信学会(IEICE)における第5番目のソサイエティとして,2014年10月1日に正式に発足した.「非線形理論とその応用」というユニークな領域を旗印に掲げた点が特徴である.

NLSは,他のソサイエティと比べると会員数が約1/10程度の小規模な組織である.しかし,それは弱点ではなく,むしろ機動性の高さと柔軟な活動スタイルを生み出す源泉となってきた.例えば,2010年に創刊された英文オープンアクセス誌Nonlinear Theory and Its Applications, IEICE(NOLTA誌)では,創刊当初から国際的な編集体制を整え,海外研究者を積極的に巻き込むことに成功した.これは,小規模ソサイエティならではの迅速な意思決定と行動力の成果である.また,当時からオープンアクセス化を実現しており,今振り返れば時代を先取りした取組みであったと言える.こうした活動は,NLSの学術的な「顔」となり,外部への発信力を大きく高めてきた.

更に,NLSの存在は国際的な文脈においても特別な意味を持つ.米国や欧州の主要学会を見渡しても,非線形科学・工学そのものを専門領域とする学術コミュニティは存在せず,NOLTAは世界唯一の非線形に特化した学術コミュニティである.学際性と国際性を併せ持つその立ち位置は,IEICEにおける新しい国際的発信拠点となることが期待されている.

もっとも,NOLTAの活動の歴史は2014年に始まったわけではない.長らく基礎・境界ソサイエティ(ESS)のサブソサイエティとして活動し,研究会や国際会議,出版を通じて独自のコミュニティを築いてきた.特に1990年には第1回NOLTAシンポジウムが広島県蒲刈島で開催され,以後毎年継続されて国際会議として定着した.こうした積み重ねがあって,ソサイエティの発足へと結実した.

ここで改めて,「非線形」という言葉に込められる意味を説明したい.しばしば「非線形」は単に数学的な「線形」の対義語として,すなわち「線形ではないもの」として理解されがちである.しかし本質的には,多様な要素の相互作用,自己組織化,創発といった複雑性を統一的に扱うための学問的視座である.

物理学における振動・カオス現象,通信システムにおける非線形ひずみ,制御工学における多安定性や複雑な動作モード,情報科学におけるネットワーク・最適化・機械学習,更には生命現象や経済システムに至るまで,非線形は「現象の複雑さを理解し,新たな秩序を見いだす」ための共通言語となっている.20世紀後半から21世紀にかけて,非線形科学はこうした視座の下で急速に学際的な広がりを見せ,新しい学問潮流を形成してきた.このような背景の中で誕生したNLSの理念は,非線形をキーワードに分野横断的な研究者をつなぎ,自由闊達な議論を通じて新しい学問を育成・発信することである.2014年のソサイエティ化を経て,国際的に通用する独立した学術組織としての基盤を確立し,非線形科学研究の国際的拠点として歩を進めている.

本稿では,NLSの発足に至る経緯,及びその後の10年の歩みを振り返る.その上で,現在ソサイエティとして直面している課題と将来展望を論じる.

2. NOLTAソサイエティ発足までの経緯と体制

2.1. ESSにおけるサブソサイエティの位置付け

NOLTAの源流は,1951年に設立された非直線理論研究専門委員会に遡る.その後1970年に非線形問題研究専門委員会(NLP)と改称され,電子・通信・制御など多様な分野における非線形現象の研究をけん引した.1990年には第1回NOLTAシンポジウムが広島県蒲刈島で開催され,国内外の研究者を集めて議論を深める国際的な舞台が誕生した.


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