低軌道(LEO)衛星を用いた通信システムは,宇宙,航空,海洋などを含む広範囲なフィールドをつなぐ大容量通信手段として期待されている.衛星間の通信には高速大容量通信技術である光空間通信(FSO)の開発も進められており,LEO衛星を多数用いた大容量ネットワークシステムの実現が期待されている.このためには,高速に移動するLEO衛星によるネットワークを効率良く構成し活用する制御技術が求められる.本稿では,これらLEO衛星通信ネットワークの特徴的な制御技術を解説する.NECでは,これらの技術開発を進め,高速性,安定性,柔軟性を向上する通信基盤技術を確立し,Beyond 5G・6G時代の通信需要拡大に対応する.

2030年の衛星通信ネットワークに向けた研究・開発の取組み
Research and Development towards Satellite Communication Networks in 2030

キーワード:衛星コンステレーション,宇宙統合ネットワーク,光空間通信,経路制御
1. は じ め に
多数の低軌道(LEO)衛星を用いたLEO衛星コンステレーションによる通信サービスは,地球全域をカバーし静止軌道(GEO)衛星等とも接続する大容量通信手段として期待されている.LEO衛星への通信はアンテナ・信号ビームの方向制御技術が発展したことで接続が容易となり,幅広い種類のユーザの利用が可能になった.LEO衛星は,GEO衛星と比較して低い軌道高度にあるため高速通信が可能性でありつつ,その高度は,陸・海・空・宇宙に存在するユーザからアクセスできる.また近年,打上げコストの低下も相まって,大容量通信サービスの開発が活発化している.
LEO衛星は, Beyond 5Gや6Gにおいて,衛星通信を含む非地上系ネットワーク(NTN)の主要部分としても期待されている.NTNの将来像は,静止軌道(GEO)衛星,低軌道(LEO)衛星,高高度プラットホーム(HAPS)などにより,多層ネットワークとして構成されるマルチオービット構想が提唱されており,更には地上ネットワークと統合された宇宙―空―地上統合ネットワーク(SAGIN)が期待されている(1).
LEO衛星間の通信には,光の周波数を用いる大容量無線技術である光空間通信(FSO)の導入が検討されている.宇宙空間では,光の直進性を阻害する大気がないため,効率の良いFSOの実現が期待される.100Gbit/sを超えるLEO衛星間FSOの開発が進められている.
一方,LEO衛星は高速に軌道上を移動するため,ネットワークを維持し,安定した遅延,低遅延の通信サービスを提供するためには,新たなネットワーク制御技術が必要となる.低遅延・低遅延変動による安定性を新たな価値として提供することにより,既存システムによる地上インターネットの延長だけでなく,ミッションクリティカル通信等の用途に活用を広げられると期待される(2).
これらLEO衛星によるネットワークの概要を図1に示す.軌道高度を1,200kmとすると地上から衛星までの遅延は最短4ms.衛星の移動速度は26,000km/hとなる.NECでは,LEO衛星間にFSOを用いた光通信衛星コンステレーション構築に向け,FSO及びネットワーク制御技術の研究開発を進めている(2).

以降,本稿ではLEO衛星ネットワークの構築に向けた技術課題を示し,その研究開発について解説する.

