2.
Wi-Fi機器を用いたヒトセンシング
Human Sensing Using Wi-Fi Devices
本間尚樹 中山武司 飯塚翔一 村田健太郎

本稿では,家庭・オフィス環境におけるISAC(Integrated Sensing and Communication)の応用可能性について検討し,通信システムをベースとしたセンシング技術の利点と課題を明らかにする.まず,Wi-Fi CSI(Channel State Information)を用いた非同期環境下でのヒト測位手法を紹介し,位相情報が取得できない場合でも電力応答を活用することで高精度な測位が可能であることを示す.更に,CSIが取得できない単素子アンテナ構成の家電において,RSSI(Received Signal Strength Indicator)を用いた在不在検知方式を提案し,冷蔵庫への実装例を通じて,センシング範囲や検出しきい値に関する課題とその解決方法を提示する.実機評価により,冷蔵庫周囲3mの範囲で安定した検知性能を確認した.本技術はIoT(Internet of Things)家電における省エネ制御の高度化に寄与する.
キーワード:ISAC(Integrated Sensing And Communication),CSI(Channel State Information),ヒトセンシング
1. ま え が き
近年ISAC(Integrated Sensing And Communication)は,無線システムにおける周波数及びハードウェア資源有効活用法の一つとして注目されている(1),(2),(3).ISACはセンシングシステムに通信機能を追加する方式と,通信システムにセンシング機能を追加する方式に大別される(4).
著者らはこれまで家庭・オフィス環境を想定し,通信システムをベースとしたセンシングについて検討してきた(5),(6).応用の観点では通信の需要がセンシングより大きいため,通信システムを中心に最小限のコストでセンシング機能を実現することが望ましい.また,近年の標準化動向を見ると,通信システムへのセンシング機能の搭載に向け様々な検討が進んでいることが分かる.特にIEEE 802.11では,IEEE 802.11azやIEEE 802.11bkの端末測位・測距に関して,IEEE 802.11bfではチャネル情報(CSI:Channel State Information)を利用するデバイスフリーセンシングに関する規格が検討されており,近い将来多くのIoT(Internet of Things)機器への機能搭載が期待されている.
本稿では,家庭・オフィス環境に適したISACの利用の可能性と効果について解説するとともに,著者らの検討例として,Wi-Fi CSIを用いたヒト測位法とヒトセンシングの実用例について紹介する.

