電子情報通信学会 - IEICE会誌 試し読みサイト
Vol.109 No.5 (2026/5) 目次へ

前の記事へ次の記事へ


タイトル2.

AI技術・政策動向と社会システムへのインパクト

Trends of AI Technology and Policy, and Their Impact on Social Systems

福島俊一

福島俊一 国立研究開発法人科学技術振興機構研究開発戦略センター

Toshikazu FUKUSHIMA, Nonmember (Center for Research and Development Strategy, Japan Science and Technology Agency, Tokyo, 102–0076 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.109 No.5 pp.345–349 2026年5月

© 2026 電子情報通信学会

AI技術は生成AIからAIエージェントへと発展し,社会は「情報社会」から人間とAIが協働する「AI共生社会」へ移行しつつある.この社会システムにおけるAIトランスフォーメーションがもたらす価値創出と新たなリスクに着目し,AIガバナンスの重要性とその国際的な政策動向を論じる.更に,AIエージェントによるエンパワーメント,社会シミュレーション,自動交渉といった例示を通じ,リスクを制御しつつ価値を最大化する社会システム設計と,人間中心の共生の在り方を展望する.

キーワード:AI共生社会,AIエージェント,生成AI,AIガバナンス

1. AI技術の急速な発展

人工知能(AI)技術が急速な発展を遂げている(1),(2).ChatGPTに代表される生成AIは,自然言語による問いかけに対して,まるで人間のような自然な応答や専門家並みの知識・能力を備えているかのような応答を返す.研究者のみならず広く人々に驚きをもたらし,利用者を爆発的に増やした.それまでのAIは特定の目的・用途ごとに作られた目的特化AIだったが,あらゆる問いかけに(たまに間違えることを含めて)人間並みの応答を返す汎用目的AIが実現されたのである.

そこにとどまらず,画像・音声・動画を用いた対話,プログラムコードの生成,ロボットの行動計画・動作制御なども行えるようになった(マルチモーダル化・フィジカル化).当初は苦手とした計算問題や論理推論も難なくこなすようになり,国際数学オリンピック金メダルに相当する能力を示すほどになった(汎用化・高精度化).更に「AIエージェント元年」といわれるほど,AIの自律化(エージェント化)がホットトピックになっている.問いかけに対して応答を返すことが基本の生成AIに対して,AIエージェントは,与えられた目標からそれを達成するための手順を計画し,Webサイトを検索・操作したり,プログラムを生成・起動したりといったアクションまで実行する.このような急速なAI技術の発展が僅か4~5年の間で起こり,この勢いはまだ止まりそうにない(図1).

最近数年の間に様々なAIモデルが次々と発表されている.今後ますます「汎用化・高精度化」「マルチモーダル化・フィジカル化」「自律化(エージェント化)」が進むと見込まれる.

2. 情報社会からAI共生社会へ

高度に発展したAI技術は,我々の社会・生活に「知能革命」をもたらした.これを境に「情報社会」は「AI共生社会」へと移行しつつある(図2)(3)

AI技術の発展が生み出した「知能革命」を境に,情報技術の潮流がAIを巡る動きに切り替わり,情報社会からAI共生社会へと転換しつつある.

情報社会において,インフラ層は「あらゆるもののデジタル化・コネクティッド化」,アプリケーション層は「あらゆるもののスマート化・自律化」,社会実装層は「DX(デジタルトランスフォーメーション)及び社会的要請との整合」の方向に情報技術が発展し,情報の共有・活用が格段に容易になった.

知能革命を境に情報技術の潮流がAI技術を巡る動きに変わった.「AIの自律化・フィジカル化・汎用化」というアプリケーション層の潮流を軸に,インフラ層は「知能革命を支えるAIインフラ」へ向かい,社会実装層は「AIトランスフォーメーションと多層化するリスクへの対応」が活発化している.


続きを読みたい方は、以下のリンクより電子情報通信学会の学会誌の購読もしくは学会に入会登録することで読めるようになります。 また、会員になると豊富な豪華特典が付いてきます。


続きを読む(PDF)   バックナンバーを購入する    入会登録

  

電子情報通信学会 - IEICE会誌はモバイルでお読みいただけます。

電子情報通信学会誌 会誌アプリのお知らせ

電子情報通信学会 - IEICE会誌アプリをダウンロード

  Google Play で手に入れよう

本サイトでは会誌記事の一部を試し読み用として提供しています。