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AIが加速する防災DX
BOSAI-DX (Digital Transformation for Disaster Resilience) Accelerated by AI

防災DXは単なるデジタル化ではなく,デジタル技術によって防災の方法や発想を根本的に変革することであり,AIはその有効な技術として期待されている.本稿では,この10年の進化として,災害対応の現場で適用されてきた情報共有基盤,市民からの情報を集約するAIチャットボット,場所から人への支援の転換を目指した被災者データベースまで,複数の取組みを概観する.その上で,今後の展開として,被災者支援AIサービス開発基盤やデジタルツインの活用など,AIが加速し得る次世代防災システムの在り方とともに,産官学民共創による防災立国の実現について論ずる.
キーワード:情報基盤,被災者支援,デジタルツイン,産官学民共創
1. 防災DXとその国家戦略
1.1. 防災DXの定義
デジタルトランスフォーメーション(DX)とは,「デジタル技術を活用して業務や組織・社会を変革すること」である.図1に示すとおり,アナログ情報をデジタル形式に変換するデジタイゼーション(Digitization),デジタル技術を活用して個別業務プロセスを効率化するデジタライゼーション(Digitalization)を経て,デジタル技術によって全体を根本的に変革し,新たな価値を生み出すというステップが重要とされている(1).

このDXの考え方を防災に適用したのが防災DXである.災害対策基本法では,防災とは「災害を未然に防止し,災害が発生した場合における被害の拡大を防ぎ,及び災害の復旧を図ることをいう」と,三つのプロセスで定義されている(2).更に,2015年に国連で採択された「仙台防災枠組2015-2030」では,「Build BackBetter(より良い復興)」の概念が提唱されており(3),防災は単なる原状回復ではなく,より防災力が高く,魅力的な社会を構築する機会とすることが重要とされている.防災DXの本質的な目的は,防災の定義にある三つのプロセスを変革するとともに,一つ加えて,よりよい社会の構築に結び付けることにある.そして,近年急速に進展しているAI(人工知能)は,そのための技術として大いに期待されているところである.
1.2. 我が国の動向
我が国における防災DXは,国レベルで示される様々な計画や制度にも明記され,重要視されていることがうかがえる.
2023年7月に「国土強靱化基本計画」が改定され,国土強靱化を推進する上での基本的な方針である5本柱の一つに「デジタル等新技術の活用による国土強靱化施策の高度化」が位置づけられた(4).この計画は分野別計画の上にかぶさるアンブレラ計画として位置づけられており,この傘の下にある防災基本計画や国土形成計画等はこの大方針に従う形で進められることとなっている.
2025年5月に改正された災害対策基本法では,「場所から人への支援の転換」という新たな方針の下,被災者支援に関する条項が新たに盛り込まれた.被災住民に関する情報を自治体間で提供し合うなど,新たな情報の取り扱いについての記載とともに,「情報通信技術その他の先端的な技術の活用に努める」といった努力義務が新たに記載されている.

