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Vol.109 No.5 (2026/5) 目次へ

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タイトル6.

通信×AI

──安定的な通信を支えるAI技術──

Telecommunications × AI: Ensuring Network Stability through Intelligent Systems

池内光希 高橋洋介

池内光希 正員 NTT 株式会社NTT ネットワークサービスシステム研究所

高橋洋介 正員 NTT 株式会社NTT ネットワークサービスシステム研究所

Hiroki IKEUCHI and Yousuke TAKAHASHI, Members (NTT Network Service Systems Laboratories, NTT, Inc., Musashino-shi, 180–8585 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.109 No.5 pp.369–375 2026年5月

© 2026 電子情報通信学会

通信ネットワーク運用の複雑化に対し,AI技術の導入が進んでいる.本稿では,異常検知,要因分析,制御・復旧といった個別タスクへのAI適用から,大規模言語モデルを始めとする生成AIの活用,更にはAIエージェントを用いた統合的運用(AgenticOps)まで,最新動向を概観する.また,安全な自律運用を実現するためのネットワークデジタルツインの役割についても論じ,AI技術がネットワーク運用の高度化にもたらす可能性と今後の展望を示す.

キーワード:ネットワーク運用,大規模言語モデル,AIエージェント,デジタルツイン

1. は じ め に

近年,クラウドサービス,IoT,リモートワークなどの普及により,社会インフラとしての通信ネットワークの重要性はますます高まっており,その安定運用に対する社会的要請は極めて強い.一方,サービスの多様化や大規模化に伴い,ネットワーク運用の複雑性は増大し続けている.

ネットワーク運用とは,ネットワークの性能劣化や障害を未然に防ぎ,あるいは迅速に復旧することで,サービスの品質を維持する一連の活動を指す.この運用プロセスは,大きく「検知」「分析」「制御・復旧」の三つのフェーズに分類される(1).従来,これらの多くは人手に依存してきたが,大量の監視データから異常を見逃さずに検知し,複雑な因果関係を分析して,適切に対処することは,運用者にとって大きな負担となっていた.

このような課題に対し,運用の各フェーズでAI技術の導入が進められている.近年では,大規模言語モデル(LLM)の登場により,運用ノウハウの形式知化や対話的な障害対応支援といった新たな可能性が開けた.更に意図理解・意思決定・行動の自律性を持つAIエージェント型アーキテクチャへの移行も注目を集めている.

本稿では,ネットワーク運用へのAI技術適用に関する最新動向を概観する.2.ではネットワーク運用の各タスクに対するAI技術の研究動向,3.では生成AI技術の適用,4.ではAIエージェントによる統合的運用を論じる.5.ではデジタルツインとAIの融合を論じ,6.で今後の展望をまとめる.

2. ネットワーク運用におけるAI技術

本章では,異常検知,要因分析,制御・復旧という運用プロセスの主要タスクに焦点を当て,近年の技術動向を概観する.これらは後述するAIエージェント型アーキテクチャにおいても,外部の専門機能として統合される重要な要素技術である.

2.1. 異常検知技術

ネットワークの性能劣化や機器故障の予兆を早期に検知することは重要である.トラフィック量などの時系列データ,機器が出力するログやアラーム,各種テレメトリデータなど,多様なデータソースを監視する必要があるため,固定閾値ベースの判断では対応が困難であり,機械学習ベースの手法が主流となっている(2),(3).深層学習モデルの進化は目覚ましく,時系列データに対してはLSTMからTransformerへ(4),ログデータに対してはBERTを応用した手法(5)など,データ特性に応じた様々な技術が開発されている.


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