
空間伝送型ワイヤレス電力伝送システム(WPT)の現在と展望
小特集編集にあたって
編集チームリーダー 相川直幸
近年,空間伝送型ワイヤレス電力伝送(WPT:Wireless Power Transfer)は,配線や電池交換に伴うコスト・保守負担を低減し得る技術として注目され,IoTデバイス,電気自動車(EV),通信インフラなど多様な分野で社会実装に向けた取組みが進んでいる.また,国際標準化や制度整備の進展を背景に,WPTは研究段階から実装段階へ移行しつつある.一方で,適用領域の拡大に伴い,周波数利用や安全性を含む制度面の整理に加え,送受電の統合設計や要素技術の高度化が重要となっている.本小特集では,通信と給電の融合,IoT向け低電力WPT,国際標準化,ミリ波WPT,非地上ネットワーク(NTN)との連携,走行中給電までを俯瞰し,空間伝送型WPTの現在地と展望を整理する.
第1章では,ソフトバンク株式会社の長谷川直輝様から,デジタルツイン社会におけるIoT電源課題を背景として,RF・マイクロ波方式WPTの制度化と実装の広がりを概観頂くとともに,通信信号を電力としても活用するSWIPT研究の発展,基地局統合型WPT,ミリ波帯における通信・給電連携実証など,同社の取組みを紹介頂く.
第2章では,パナソニックホールディングス株式会社の田中勇気様から,低消費電力機器に向けた空間伝送型WPT技術について,国内制度化(2022年5月の電波法関連省令改正)と利用可能周波数(920 MHz帯,2.4 GHz帯,5.7 GHz帯)を整理頂いた上で,とりわけ小電力・広範囲を実現する920 MHz帯システムを中心に,アンテナ等の要素技術,関連する規制・標準,及びその動向を解説頂く.
第3章では,エイターリンク株式会社の小舘直人様から,空間伝送型WPT(beam WPT)の実用化動向を踏まえ,グローバル展開に不可欠な国際標準化・制度化の現状を,WRC/ITU-R等の国際的枠組み,地域連携,各国制度という階層構造から俯瞰して解説頂き,今後の展望を示して頂く.
第4章では,京都大学の篠原真毅様から,高効率・大電力化の要請を背景に期待されるミリ波WPTについて,研究開発とビジネスの現状を紹介頂くとともに,簡易大規模フェーズドアレーアンテナ及びビームフォーミング技術を中心に要点を整理頂き,将来の空間伝送型WPTの展望を解説頂く.
第5章では,金沢工業大学の伊東健治様から,ミリ波帯WPTの実用化に向けてボトルネックとなる送受電回路の低効率という課題を踏まえ,受電側の中核技術であるミリ波レクテナの高効率化について解説頂く.
第6章では,東京理科大学の居村岳広様から,磁界共振結合方式による走行中ワイヤレス給電(DWPT)について,制御,コイル埋設,漏えい磁界抑制の観点から,実用化に向けた要点を整理して解説頂く.
本小特集では,制度化・標準化の動向から,要素技術,研究開発の最前線,並びに社会実装に向けた課題までを俯瞰できるよう構成した.本小特集が,空間伝送型WPTに関心を持つ幅広い読者にとって,今後の研究開発・標準化・社会実装を考える一助となれば幸いである.
最後に,御多忙の中で御寄稿を快諾頂いた執筆者の皆様,並びに本小特集の企画・編集に御尽力頂いた関係各位に深く御礼申し上げる.小特集編集チーム 相川 直幸 秋笛 清石 大隅 歩 木下 裕磨 久我 守弘 多和田 雅師 宮下 山斗 宮田 孝富 宮北 和之

