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基地局機能拡張に向けた通信とワイヤレス給電の融合研究について
Integrating Communication and Wireless Power Transfer for Advanced Base Station Functionality

デジタルツイン社会の進展に伴い,IoTデバイスの電源課題を解決する技術としてワイヤレス電力伝送(WPT)が注目されている.特にRF・マイクロ波方式は制度化とアンテナ技術の進歩により実装が進み,工場センサや物流タグなど多様な用途が拡大している.また,通信信号を電力として活用するSWIPT研究が発展し,通信と給電を統合した新たな基地局構想も具体化しつつある.ソフトバンクでは基地局統合型WPTやミリ波帯での通信・給電連携実証を進め,6G時代のエネルギー統合システムの実現を目指している.本稿では,これらの制度化動向と技術,取組みを紹介する.
キーワード:ワイヤレス電力伝送,SWIPT,Beyond 5G/6G,通信電力融合,IoT
1. は じ め に
デジタル技術の急速な進展により,社会の様々な領域でデジタルツイン化が進んでいる.都市,交通,産業設備,社会インフラといった多様な対象がリアルタイムにセンシングされ,そのデータを活用した最適化・自動化が高度化している.この社会変革を支える基盤となるのが,膨大な数のIoTデバイスである.しかし,こうしたデバイスを大規模に配置・運用する上で,依然として“電源”が最大のボトルネックとなっている.
IoTデバイスの多くは配置場所が分散しており,電源ケーブルの敷設はコスト・安全性・施工性の観点から制約が大きい.また,電池駆動に依存すると定期的な電池交換やメンテナンスが必要となり,数万~数百万規模のデバイスが社会実装される未来においては,人的・経済的負担が爆発的に増加する.この「電源問題」は,IoT社会の拡大を阻む隠れた課題であり,これを解決する技術としてワイヤレス電力伝送(WPT: Wireless Power Transfer)が注目を集めている.
WPT技術の歴史は20世紀初頭に遡り,TeslaによるWardenclyffe Tower(用語1)構想は,空間伝送による電力供給という概念の原点とされている.その後,1960年代にはBrownによってマイクロ波送電の実験が行われ,レクテナ(用語2)によるRF-DC変換という,現代のWPTに不可欠な基盤技術が確立された.1970年代以降はNASAやJAXAによる宇宙太陽光発電(SPS: Space PowerSystem)構想を通じて,長距離マイクロ波送電の研究が進展した.また,2010年代には航空宇宙分野において,通信と電力伝送を同じシステムで両立させる実験が行われ(1),(2),その成果は後のSWIPT(Simultaneous Wireless Information and Power Transfer)の萌芽となった.
近年では電子デバイスの省電力化が進み,μW~mW級の電力でも駆動可能な低消費電力センサが普及している.加えて,整流回路の高効率化,アンテナ技術の進歩,ビームフォーミングの高度化など,WPTを支える技術群が急速に成熟してきた.これらの技術進展により,従来は大規模研究用途に限られていたRF・マイクロ波WPTが,現実の産業・社会へ適用可能な段階へと移行しつつある.
特に重要な転機となったのが,2022年の空間伝送型WPT制度化である.この制度整備により,920MHz帯,2.4GHz帯,5.7GHz帯を用いた空間伝送型WPTが国内で公式に利用可能となり,オフィス・工場・店舗などの室内空間での給電が実用化フェーズへと加速した.制度化は技術開発だけでなく,産業界の事業実装を強力に後押しする契機となっている.

