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Vol.109 No.6 (2026/6) 目次へ

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タイトル2.

IoT・センサデバイスに向けた無線電力伝送技術

Wireless Power Transmission for IoT and Sensor Devices

田中勇気

田中勇気 正員 パナソニックホールディングス株式会社MI本部

Yuki TANAKA, Member (Manufacturing Innovation Division, Panasonic Holdings Corporation, Kadoma-shi, 571-8508 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.109 No.6 pp.461–465 2026年6月

© 2026 電子情報通信学会

IoT(Internet of Things)デバイスの急速な普及に伴い,電源供給課題がIoTの浸透の大きな障壁となりつつある.このようなIoTデバイスに代表される低消費電力機器に向けた電力供給手段として,WPT(Wireless Power Transmission/Transfer)技術が注目を集めている.国内では,2022年5月に電波法関連省令改正に伴い,空間伝送型WPT技術が国内で利用可能となった.空間伝送型WPTシステムには920MHz帯,2.4GHz帯,5.7GHz帯の3周波数が利用可能となっている.本稿では特に小電力・広範囲を実現する920MHz帯空間伝送型WPTシステムを中心に,アンテナ等の要素技術と関連する規制・標準,及びその動向について述べる.

キーワード:Ambient IoT,レクテナ,小型アンテナ,分散アンテナシステム

1. 背 景

1.1. IoT・センサデバイスの電源課題

IoT(Internet of Things)デバイスが産業や我々の身近な暮らしに浸透して久しい.これらのデバイスは,スマートバンドやスマートウォッチ等のウェアラブルデバイス,温湿度センサのような環境モニタリングデバイス,物品の位置をトラッキングするビーコンデバイス,電子棚札(ESL:Electronic Shelf Label)等,極めて多岐にわたる.これらのデバイスは,主にセンサとして実世界と情報ネットワークを接続する接点として,その重要性を増しつつある.加えて生成AI以降,CPUやGPU等の情報処理機能を脳,ロボット等のアクチュエータを身体,そしてセンサやカメラを五感に見立てて実世界でAIの学習を行うPhysical AIや,遍在する基地局からバックスキャッタ通信などの低消費電力通信を用いてIoTデバイスを利用するAmbient IoTといった考え方も浸透している(1).これらのセンサはコイン電池等の小型の一次電池やリチウムイオン二次電池等の電源で駆動されることが典型的である.

しかしながら,これらの一次電池交換サイクルは1か月~数年,二次電池充電サイクルは1日~1か月程度に設計されており,機器の台数が増えるごとに電池交換・充電にかかる人的コストが増大する.また,高電圧や稼動部,回転部等,物理的に電池交換や電源配線が困難な用途も存在する.このような電源課題に向けて,エナジーハーベストに代表される自立電源が採用されるケースも増加しつつあるものの,光発電素子では大面積を必要としたり,熱電変換素子では利用環境が限られたりするなど,一般のIoTデバイスに適用するには課題が存在する.

そこで,空間を伝搬する電磁波を用いて電力伝送を行う無線電力伝送(WPT:Wireless Power Transmission/Transfer)がIoTにおける電力供給手段として注目を集めている.

1.2. 空間伝送型WPT

WPTの中でも,アンテナを用いて電波を空間中に送信し,空間を伝搬する電波を収集してエネルギーに変換する方式を国内では空間伝送型WPTと呼ぶ.電波を用いて電力を伝送するというアイデアは非常に古く,100年以上前に遡る.1926年の国際会議においては,八木博士・宇田講師により電力伝送の実験が報告されており,数mの伝送距離において数十~100mWの直流電力が得られている(2).当時の研究では送信側の発振器・増幅器,受信側の整流素子として真空管が用いられており,周波数はおよそ68MHzであった.


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