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ミリ波WPTにおける簡易大規模フェーズドアレーアンテナ及びビームフォーミング技術と今後の空間伝送型WPTの展望
Simple Large-scale Phased Array Antenna and Beamforming Technology for Millimeter-wave WPT and the Perspective for Radiative WPT in Future

複数ユーザーにマイクロ波で無線電力伝送を行うワイドビームWPTのビジネスが近年始まっているが,ビジネスの拡大に伴い,ユーザーはより高効率/大電力を要求するようになった.高効率/大電力WPTのためには周波数を高くすることが有効であり,ミリ波WPTが期待されている.本稿では現在のミリ波WPTの研究開発とビジネスの現状について解説する.特に今後のWPTの発展に不可欠の簡易大規模フェーズドアレーアンテナ及びビームフォーミング技術を中心に解説し,今後の空間伝送型WPTの展望について述べる.
キーワード:空間伝送型ワイヤレス給電,ミリ波,フェーズドアレーアンテナ,ビームフォーミング
1. は じ め に
空間伝送型ワイヤレス給電(WPT:Wireless Power Transfer)の研究開発は1960年代にW.C. Brownにより主に2.4GHz帯のマイクロ波を用いたナロービームWPTの実証実験から研究が加速した(1).当時,波長の短いマイクロ波を用いることができるようになったため,アンテナ利得を向上させることができ,有線送電の代わりのように1ユーザーに高効率で無線送電が可能となったのである.2.4GHz帯はISM(IndustrialScientific Medical)周波数とRadio Regulationに規定されているため,この頃からWPTの研究や実証実験に多く用いられた.Brownの実証実験は宇宙太陽発電SPS(Solar Power Satellite)の提唱にもつながっている(2).Brownの実証実験は画期的なものであったが,ユーザーが期待する高効率でワイヤレス給電をするために必要なアンテナ利得(面積)が理論的に大きくなってしまい,SPS以外のキラーアプリを当時生み出すことができなかった.
2010年代に入り,結合型WPTを含めWPTビジネスに注目が集まると,空間伝送型WPTも実用化を模索し始める.2010年代に入ってもなお,回路や半導体の変換効率を考慮すると,マイクロ波帯の電波が空間伝送型WPTには最適であると考えられていた.通信やレーダー等の全ての電波応用は実用化にあたり電波法で全て利用周波数等が規定されているが,WPTは新しい応用であるため,歴史上全世界の電波法(相当の法律)に規定されていなかった.そこで我が国では2022年に世界に先駆けて電波法の省令改正でWPTを適法化し,920MHz帯,2.4GHz帯,5.7GHz帯の周波数帯を空間伝送型WPTとして利用できるようになった(3).
我が国ではマイクロ波帯でのWPTが適法化されたものの,歴史的に研究されてきたナロービーム型WPTは,ユーザーが使いやすいと考えるような小型アンテナでは,ユーザーの求める高効率が実現できないため,WPTビジネスとして総合的に判断した場合は不向きである.一方,現在は小電力でも無線で電気がもらえると便利であるというディジタルデバイス等が発展してきた.そのため,通信のようにマイクロ波を広げ,低効率でもいいので複数ユーザーに無線で小電力を送ることができるワイドビームWPTが現在の空間伝送型WPTビジネスには最適と判断され,現在のビジネス主流となっている.

