5.
マイクロ波・ミリ波大電力レクテナ技術
Microwave and Millimeter-wave High-power Rectenna Techniques

近年制度化された空間型ワイヤレス電力伝送システムや,ドローンなどUAVへの遠隔送電システムへの適用が想定されるマイクロ波帯,ミリ波帯における大電力レクテナについて解説を行う.これらのシステムでは,送電装置では移動体通信技術の適用が進められているが,受電装置についてはレクテナを中心とした研究開発が依然重要である.本稿では過去の研究動向,筆者らの研究成果を基に,特に大電力レクテナの高効率化に必要な設計上の要点について解説を行う.
キーワード:無線電力伝送,空間型ワイヤレス電力伝送,レクテナ,整流器,ダイオード
1. は じ め に
日本におけるマイクロ波での無線電力伝送(WPT)システムは,2022年5月の電波法施行規則等の一部改正により,構内無線局として空間型ワイヤレス電力伝送システムが制度化された(1).このとき920MHz帯,2.4GHz帯,5.7GHz帯が制度化された.主にmW級のDC給電で動作するバッテリレスInternet of Things(IoT)端末に使われる920MHz帯での実用化が先行している.2026年1月19日現在,807局が開設されている(2).更に920MHz帯での屋外型,特定小電力型WPTシステムの制度化が答申されている(3).サブ・ワット級のDC給電が求められる工場設備などの応用に用いられる5.7GHzでのWPTシステム(4)についても,運用が遅れていたが免許申請がなされている(2).更に高アンテナ利得による高空間伝送効率が得られ,スマートフォンなどへのワット級のDC給電が可能となる24GHz帯におけるWPTシステムの法制化も検討されている(5).
マイクロ波・ミリ波WPTでは,更に高電力の伝送を要する飛行中のドローンや月面でのローバーなどへの応用も議論されている(6),(7),(8).これらのWPTシステムでは移動物に取り付ける受電パネル面積の制約から,受電パネルのDC電力密度として,おおよそ10kW/m2が要求される.これよりレクテナ(用語1)間隔を0.8波長程度とすると,レクテナからのDC出力電力として,18W@5.7GHz,1W@24GHzが必要となる.このような大電力WPTにおいて最も大規模な開発を要するのは大電力かつ高利得の指向性制御を要する送電装置である.しかしながら送電用の大電力増幅器や移相回路については,移動体通信用デバイス・技術の流用が行われており,比較的見通しが良い.受電装置は大開発規模ではないが,マイクロ波・ミリ波で利用可能な整流器の汎用デバイスはなく,レクテナを中心とした研究開発が依然必要となっている.
筆者らの研究グループでは,2019~2022年度の内閣府戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第2期「IoE社会のエネルギーシステム」においてドローンへの給電を想定した5.7GHz帯レクテナの開発を行い整流効率92.7%@入力電力1W(9),83.7%@入力電力10W(10)を得ている.更に2022~2025年度の総務省・電波資源拡大のための研究開発「空間伝送型ワイヤレス電力伝送の干渉抑制・高度化技術に関する研究開発」においてスマートフォンへの給電を想定した24GHz帯レクテナの開発を行い整流効率72.7%@入力電力1W(8),整流効率68.6%@入力電力2W(11)を得ている.これらのレクテナは大電力整流器として,トップレベルの整流効率を得ている.また前述のドローンやローバーなどの受電パネルのDC電力密度の要求に応えている.
筆者はかつてダイオードミクサの開発研究を行っており,そのときのダイオードを用いた衛星通信・移動通信用ミクサ回路,例えば偶高調波ミクサ(12),の経験から,ダイオード整流器の性能を最大化することができたと考えている.本稿はこのようなマイクロ波・ミリ波における大電力レクテナ技術について,筆者らが執筆した文献(13),(14)を基に,幾つかの視点について解説を行う.

