
もう一つの“CASE”
Mobility Innovation “Another CASE”

自動車技術を取り巻く環境は,大きな変革期を迎えている.特に,Connected,Autonomous/Automated,Shared,Electricの頭文字をとった「CASE」と呼ばれる領域で技術革新が進む中,様々な研究やサービスの研究開発が進められている.しかし,これらの考え方は,自動車メーカ側からの考え方が中心であり,次世代モビリティ社会の発展を考える場合,ユーザである「人」の立場からも「新しい視点での技術革新」を考える必要があるが,そうした視点の議論はあまりされていない.そこで,本稿ではユーザとして人間中心の発想からComfortable,Affinity,Safety,Enjoymentといった,「もう一つの『CASE』」領域での技術革新の可能性を提案するとともに,関連する研究内容を紹介する.
キーワード:CASE,New healthcare,In-vehicle,State estimation,Mobility
1. は じ め に
2016年9月末日,フランスのパリで開催されたパリモーターショーで,当時ダイムラーAG・CEOでメルセデス・ベンツの会長を務めていたDr. Dieter Zetscheは,メルセデスの中長期戦略としてConnected,Autonomous/Automated,Shared,Electricの四つの領域を紹介し,その言葉の頭文字をとった「CASE」というキーワードを世界で初めて使った.
「Connected」は,自動車が情報通信端末としての機能を有し,車両の状態や周囲の道路状況など様々なデータを車載のセンサーにより取得し,情報通信ネットワークを介してこれらを集積・分析することで,自動車に様々な新しい価値を生み出すことを意味している.2025年8月にアトランタで開催されたITS世界会議では「V2X」として「Vehicle to Vehicle(車両間通信)」「Vehicle to Infrastructure(インフラ連携)」「Vehicle to Pedestrian(歩行者連携)」「Vehicle to Network(ネットワーク連携)」などに関連する多数の展示がなされた(図1).

「Autonomous」は,ドライバーレスの自動運転車の開発であり,2025年現在,アメリカでは,Google傘下のWaymo,Amazons傘下のZoox,Teslaなどがアメリカのフェニックス,ロサンゼルス,サンフランシスコ,オースティン,ラスベガス,アトランタなどでサービスを展開している.
アメリカだけでなく,中国でも,百度傘下のApollo Goや小馬智行のロボタクシーサービスが,北京,上海,広州,深センなどで展開されている.また,乗用車だけではなく,トラック業界でも自動運転化が進んでいる.2025年,アメリカのAurora社は,Aurora Driverというシステムを開発しテキサス州のダラス―ヒューストン間でドライバーレスの自動運転トラック輸送サービスを開始している.長距離輸送が多いトラック業界で自動運転の導入が進めば,長時間労働や人手不足の問題も大きく改善すると期待されている.

