
テラヘルツイメージング向けデバイスの最新技術動向
Latest Technological Trends in Imaging Device Using Terahertz Band

テラヘルツ波は100GHz~10THzの電磁波であり,広帯域が確保できることから高速大容量無線通信での活用が期待されている.それだけでなくテラヘルツ波の持つ高い直進性,誘電体の透過,波長1mmという特性を活用した高解像度断層イメージングの実現も期待されている.近年は半導体の微細加工技術の進展によりテラヘルツ波向けの半導体集積回路開発が活発化している.本稿ではテラヘルツ波向け半導体デバイス及び半導体集積回路の技術開発動向と,筆者らが開発に携わるテラヘルツイメージングシステム向け半導体集積回路の概要と評価結果を述べる.
キーワード:サブテラヘルツ,CMOS,RFIC,トモグラフィック,アレーアンテナ
1. ま え が き
テラヘルツ帯は100GHzから10THzの周波数帯の電磁波である.テラヘルツ帯はマイクロ波帯と比較すると非常に高い周波数であるため半導体デバイスで取り扱うのが困難である.また,光ファイバー通信で使われる波長1,300nmの近赤外線と比較するとエネルギーがeV以下と非常に小さく検出が難しいため,テラヘルツ帯は長らく未開の領域と呼ばれていた.21世紀に入り半導体の微細化が進み最大発振波数(MaximumOscillation Frequency,
)が300GHzを超える半導体デバイスが実用化され,テラヘルツ帯の集積回路開発が活発化した.テラヘルツ帯では252〜296GHzの連続した44GHzの帯域幅が確保可能であり,第6世代無線通信システムにおける高速大容量通信への適用が期待されている(1).その広帯域の活用を目的としてテラヘルツ帯を利用した数kmの通信システムの検証結果(2)や,通信用送受信集積回路の開発(3),(4),(5),(6)が報告されている.また,テラヘルツ帯は1mmの解像度と,金属は透過できないものの誘電体は透過可能で障害物背後の物質を検出可能であることから,内部構造の非破壊検査(7),(8),(9)や危険物検査(10),生物学及び医学分野(11),及び断層撮像(12),(13),(14),(15)への適用も期待されている.本稿では特に半導体デバイス及び半導体集積回路の技術開発動向と,筆者らが開発に携わるテラヘルツイメージング向け送信IC及び受信ICの開発事例について述べる.
2. デバイス及び集積回路の最新技術開発動向
本章ではまず半導体デバイスの最新開発動向について述べ,次に半導体デバイスの性能を高めるレイアウト構造の説明を行い,半導体増幅器の回路方式について記載した後,集積回路実装技術について述べる.
2.1. 半導体デバイスの最新開発動向
1990年代以降,パーソナルコンピュータや携帯電話向けの旺盛な半導体需要により急速に論理回路向けCMOSデバイスの微細化が進んだ.CMOSデバイスは微細化によりRF回路向けの性能も大きく向上し,CMOSデバイスのRF回路適応が進んだ.それまでCMOSデバイスによる集積回路はアナログ・デジタル混載に留まっていたが,2000年代にRF・デジタル混載が急速に進展した.2010年代に開発された14nm世代以降のCMOSプロセスは必ずしもRF性能の向上につながる微細化ではなかったが,開発された技術は同じシリコン系半導体デバイスであるSiGe HBT(Hetero Bipolar Transistor)プロセスの性能改善に応用されるだけでなく,配線層微細化技術は化合物半導体プロセスにも活用された.SiGe HBT(16)及び化合物半導体(17)の微細化による性能改善は2020年代も進んでおり,これら半導体デバイスによるテラヘルツ帯集積回路が期待されている.図1にCMOS,SiGe HBT及びInP HBTのプロセスノードに対するの値を示す.図1に示すように基本的にどのプロセスも微細化により
は向上している.とりわけ130nmノードのInPの
は1THzを超えテラヘルツ帯集積回路に用いる半導体デバイスの有力な選択肢となっている.しかし,いずれのデバイスも微細化による耐圧低下が課題であり,大電力が必要な用途には,スタック構造,電力合成回路や,空間合成などの適用が必要となる.


