
環境負荷ガスの高感度センシングに向けた2μm帯広域波長可変レーザ
Broadly Tunable 2-μm Band Laser for High-Sensitivity Sensing of Environmentally Harmful Gases

高感度なガスセンシングの実現に向け,InP系材料を用いた2.0μm帯波長可変DBRレーザを開発した.同一チップ内に複数の領域を集積したモノリシック集積型のレーザを作製し,電流制御によるモードホップ(波長飛び)のない広域な連続波長掃引幅約3.4nmを達成し,単一共振器でありながら2.0μm波長帯の
吸収線を5本検出可能であることを示した.更に超周期構造回折格子(SSG)と呼ばれる特殊回折格子を導入したSSG-DBRレーザではバーニア効果を用い1,967~2,020nmの広域(約53nm)波長可変幅を実現.2.0μm波長帯の
ガス吸収線の全域を網羅可能であることを示した.
キーワード:DBRレーザ,波長可変レーザ,TDLAS
1. は じ め に
産業革命以降の人類の経済活動により,に代表される環境負荷ガスの大気中濃度が大幅に上昇し,大規模な気候変動や地球温暖化の影響が近年深刻化している.日本政府が
の実質排出量を2050年までにゼロにする目標を掲げるなど,環境負荷ガスの排出量削減は我々の喫緊の課題となっている.これに向けて,各種環境負荷ガスの濃度をリアルタイムで局所的かつ正確に評価する手法が不可欠となる.高精度にガス濃度を評価する手法の一つとして半導体レーザを用いたガスセンシング技術が挙げられる(1).図1はTDLAS(Tunable Diode Laser Absorption Spectroscopy)と呼ばれる手法の概要を示す.発振波長を連続的に変化可能な波長可変レーザからの出力光を対象ガスに照射し,透過光の光強度変化からガス濃度を測定する手法である.対象ガスが持つ固有の吸収線をまたいで波長を変化させると透過光強度が減衰することを利用しガス濃度を測定する.このガス検出手法は高感度性,高速性,リアルタイム性といった多くの利点を持つ一方で,対象ガスに対してそれぞれ固有の吸収線波長に対応する半導体レーザの開発が必要となる.

図2は主要な環境負荷ガスである,
に加え,他の温室効果ガス濃度に間接的に関与するCOのガス吸収線を示す.光ファイバ通信で広く用いられる1.3~1.6μm波長帯に比べて,2.0~2.3μmの波長域には
ガスを含む複数の環境負荷ガスの比較的高い強度の吸収線が存在していることが知られている.これら長波長域の利用が高感度なガスセンシングシステムの実現に向けて有利と言える.

InP系材料を用いた半導体レーザは,これまでに光ファイバ通信において広く利用されており,複数の機能領域を同一チップ内にモノリシック集積することを可能にする高度な半導体加工プロセスを活用できる点が特長である.ガス吸収線検出においては干渉ガスの影響を抑え正確な濃度評価を行うため,広い波長可変範囲が求められる.InP系材料による高度なプロセス技術により,2μm帯においても広帯域波長可変特性を有するモノリシック集積レーザが可能となり,マッハ・ツェンダー干渉計型(2)やRTF(Reflection-type Transversal Filter)を用いたモノリシック集積半導体レーザ(3)などが実現されている.

