3-2 3. エッジコンピューティング実用化技術
エッジコンピューティングの品質制御技術を用いた遠隔ロボット操作の実証
Validation of Remote Robot Operation with Edge Computing-based Quality Control Technology

日本の農業は労働力不足に直面し,その解決に向けた遠隔ロボット操作によるスマート農業が注目されている.しかし,ロボットの遠隔操作にあたりネットワークの遅延変動が課題となっている.本稿ではネットワークが遅延変動しても遠隔操作の操作性を損なわないよう,コンピューティング処理を含むEnd-to-Endの遅延をリアルタイムに監視し,品質状況に応じてユーザアプリケーションの動作をリアルタイムに制御するアーキテクチャを紹介する.実証では,東京と秋田を商用ネットワークで接続し,収穫ロボットを用いて実施した遠隔イチゴ収穫の実証結果について述べる.
キーワード:遠隔ロボット操作,エッジコンピューティング,E2E遅延,リアルタイム品質制御
1. は じ め に
現在,農業において高齢化による産業人口減少が深刻化しており,基幹的農業従事者数はこの20年で半減している(1).加速する労働生産性の減少の解決手段としてスマート農業が注目されており,ロボティクスやテレオペレーション技術の導入が進んでいる(2).特に,遠隔ロボット操作による農作業支援は柔軟性・安全性・費用対効果などの点で有望で,危険な環境等での作業リスクを下げつつ,安全な場所から複雑な作業を効率的に遂行できることが示されている(3),(4).
遠隔ロボット操作の操作性を高める手段として,エッジコンピューティングの活用は有用である(5).例えば,画像解析などのデータ処理による収穫可否判定などのインテリジェントなアプリケーションは,農作業の正確性と効率を大幅に高める.またその処理をエッジコンピューティングにすることで,ロボット等の機器のスリム化及びエネルギー消費の低減に加え,ネットワークの入り口でのデータ処理による帯域負荷の低減及び伝送遅延の抑制も可能となる(6).
農業に資する操作性の高い遠隔ロボット操作の実現のためには,リーズナブルなシステム構成と,エッジコンピューティングの安定した品質が不可欠である.通信ネットワークでは品質制御を行うことで遅延,パケット損失をコントロールすることは可能であるが,ベストエフォートネットワークでは制御することは難しい(7).またエッジアプリケーションを一つのノードで複数ユーザが共有する場合,他ユーザの高負荷処理によるリソース競合が不可避である.そのため他ユーザの利用状況によってはアプリケーションの処理時間に遅延が生じ得る.
遠隔操作環境のEnd-to-End(E2E)の品質劣化に対して,予備のネットワーク経路及びエッジコンピューティングノードへリアルタイムに切り替える手法が提案されている(8).しかし,冗長なインフラ配備はコスト高の手法であり,農業に適したより低コストのソリューションが求められている.
これらの状況を踏まえ,本稿ではベストエフォート型ネットワークを用いた遠隔ロボット操作システムにおいて高い操作性・安定性を維持することを目的として,E2E遅延を監視し,E2E品質レベルに応じてロボットアプリの挙動を協調制御するリアルタイム品質制御アーキテクチャについて述べる.

