
光ネットワークのデジタルツインとAIエージェントを活用した大容量光回線の自律制御技術
Autonomous Control for Optical Network Based on Digital Twins and AI Agents

実ネットワークの設備情報と物理状態を仮想空間上に精巧に再現し,シミュレーションを通じて設計・制御を行う「光ネットワークデジタルツイン」について紹介する.特に本稿では,光トランシーバの信号処理のみで伝送路の光パワー分布を可視化する光伝送路モニタリング技術(DLM)と,物理層データを解釈し自律制御を行う生成AIエージェントを活用することで,光伝送路の伝搬パワーレベルを最適化する技術を紹介する.更に,国際会議OFC2025における本技術のデモの成果を報告し,高度な専門知を代替する自動運用の実現性と,将来の商用展開への展望を論じる.
キーワード:Open APN,光NWデジタルツイン,光伝送路モニタリング(DLM),生成AIエージェント,光伝搬パワーレベル最適化
1. 背景:データ駆動型社会と光ネットワークの進化
1.1. 社会的要請としてのトラフィック急増とIOWN構想
SNS,高精細動画配信,そして生成AI(Generative AI)サービスの爆発的な普及に伴い,通信ネットワークは単なる情報の通り道ではなく,社会生活及び産業活動を根底から支える重要インフラとしての地位を確立している.特に,生成AIの学習や推論に伴うデータセンタ間のトラフィックは指数関数的に増加しており,これらのデータを遅滞なく,かつ低消費電力で転送する能力がネットワークに求められている.
ユーザが必要とするデータを,場所の制約なくリアルタイムに利用可能にするためには,従来の電子処理を中心としたネットワークの限界を超え,大容量・低遅延かつ柔軟な構成変更が可能な次世代インフラが不可欠である.この課題に対し,光を中心とした革新的技術によって高速大容量通信と膨大な計算リソースを提供するIOWN(Innovative Optical and Wireless Network)構想が提唱されている(1).
IOWN構想の下で開発が進められているOpen APN(All Photonics Network)は,膨大な通信データを大容量・低遅延・省電力で提供する次世代の光ネットワークである.Open APNでは光信号の電気変換を最小限に抑え,大容量・低遅延・低消費電力な光パスをオンデマンドに提供することを目標としている.これにより,放送局機能を遠隔地に分散させるリモートプロダクション,数千キロメートル離れた場所からの遠隔手術支援,そしてデータセンタ間を光で直結しあたかも一つの巨大なコンピュータとして扱うデータセンタ・エクスチェンジなど,従来のネットワークではなし得なかったサービスの実現が期待されている.

