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今更ながら,って何?
A Physical Meaning of the -factor
マイクロ波回路,特に共振器を扱うと,ファクタ(値)というものによく出会う(1),(2).このには,代表的な2種類の表現がある.次に示すように,一見これらの二つのはお互いに全く違うもののように見える.果たしてそうなのか? これら二つのに共通の物理的イメージを考えてみようというのが本稿の目的である.
典型的なの表現の一つは,回路のエネルギーの関係を示すもので,
(1)
で表され,ここで,(は共振周波数),は回路に蓄積されているエネルギー,は1秒当り消費されるエネルギーである.
もう一つのは周波数の関係を表すもので,次式で表現される.
(2)
ここでは共振周波数からの周波数変化(帯域)である.
さて,共振回路の中では,どういうことが起きているのだろう,電波はどう動いているのだろう?
共振回路にエネルギーを蓄積するために,電波を次々と入れていくことを考えてみよう.このとき,入れていく電波は回路中にある(生き残っている)電波と積み重なっていくことが必要である.言い換えると,それが共振回路に求められる性質である.電波が積み重なるためには,位相が合うことが要求される.そして継続的に位相が合って波が重ね合っていくためには,各々の波の周波数はある帯域内で一致していなければならない.これが,式(1)のと式(2)のの間の密接な関係を表す物理的なイメージであり,ファクタの実体は,電波が積み重なっていくという動的(ダイナミック)な描像で表される.
上で,共振回路の作用として,回路中で生き残っている電波と入ってくる電波とが積み重なっていくことを考えた.電波は回路の中でどのくらい生き残るのだろう,ここでは共振器中電波の寿命みたいなものを考えてみよう.
式(1)のは1秒当りの損失なので,は,減衰率を表している.このとき減衰の時定数は次式で表される.
(3)
このを使うと式(1)は,
(4)
となる.つまり,が大きいと,はそれに応じて大きくなり,電波は回路の中に長時間生き残る,これは上の2.で述べたイメージを支持するものである.またその生き残っている電波と新しく入ってくる電波とがうまく重なり合うためには,周波数がより近い,つまり帯域がより小さいことが求められることになる.
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