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Vol.99 No.12 (2016/12) 目次へ

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今更ながら,mathって何?

A Physical Meaning of the math-factor

水野皓司

水野皓司 正員:フェロー

Koji MIZUNO, Fellow.

電子情報通信学会誌 Vol.99 No.12 pp.1191-1192 2016年12月

©電子情報通信学会2016

1.mathの代表的な表し方

 マイクロ波回路,特に共振器を扱うと,mathファクタ(math値)というものによく出会う(1),(2).このmathには,代表的な2種類の表現がある.次に示すように,一見これらの二つのmathはお互いに全く違うもののように見える.果たしてそうなのか? これら二つのmathに共通の物理的イメージを考えてみようというのが本稿の目的である.

 典型的なmathの表現の一つは,回路のエネルギーの関係を示すもので,

math

(1)

で表され,ここで,mathmathは共振周波数),mathは回路に蓄積されているエネルギー,mathは1秒当り消費されるエネルギーである.

 もう一つのmathは周波数の関係を表すもので,次式で表現される.

math

(2)

ここでmathは共振周波数からの周波数変化(帯域)である.

2.mathの物理像:エネルギー蓄積と帯域との密接な関係

 さて,共振回路の中では,どういうことが起きているのだろう,電波はどう動いているのだろう?

 共振回路にエネルギーを蓄積するために,電波を次々と入れていくことを考えてみよう.このとき,入れていく電波は回路中にある(生き残っている)電波と積み重なっていくことが必要である.言い換えると,それが共振回路に求められる性質である.電波が積み重なるためには,位相が合うことが要求される.そして継続的に位相が合って波が重ね合っていくためには,各々の波の周波数はある帯域math内で一致していなければならない.これが,式(1)のmathと式(2)のmathの間の密接な関係を表す物理的なイメージであり,mathファクタの実体は,電波が積み重なっていくという動的(ダイナミック)な描像で表される.

3.エネルギー蓄積(電波が生き残る)時間

 上で,共振回路の作用として,回路中で生き残っている電波と入ってくる電波とが積み重なっていくことを考えた.電波は回路の中でどのくらい生き残るのだろう,ここでは共振器中電波の寿命みたいなものを考えてみよう.

 式(1)のmathは1秒当りの損失なので,mathは,減衰率を表している.このとき減衰の時定数mathは次式で表される.

math

(3)

このmathを使うと式(1)は,

math

(4)

となる.つまり,mathが大きいと,mathはそれに応じて大きくなり,電波は回路の中に長時間生き残る,これは上の2.で述べたイメージを支持するものである.またその生き残っている電波と新しく入ってくる電波とがうまく重なり合うためには,周波数がより近い,つまり帯域mathがより小さいことが求められることになる.


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