小特集 通信障害と社会   1.通信障害と社会 Communication Service Outage and Society

小特集 通信障害と社会
 
1.通信障害と社会
Communication Service Outage and Society

p.24
谷脇康彦

通信ネットワークの構造変化に伴い,通信サービスの提供に関わるリスク因子の増大と多様化が進み,無謬主義からリスク管理主義への転換が求められる中,リスクの外的要因に対する機能保証と内的要因に対する信頼性向上を2本柱とする統合的なリスク管理・対処の手法の確立が求められている.本稿では通信障害をめぐる環境変化の中で通信事業者が取り組むべき対策の基本的な枠組みについて整理する.

小特集 そのとき研究の歴史が動いた ――画像認識の発展の歴史を振り返って――   カーネル法のそのとき The “Moment” of the Kernel Method

小特集 そのとき研究の歴史が動いた ――画像認識の発展の歴史を振り返って――
 
カーネル法のそのとき
The “Moment” of the Kernel Method

p.1100
前田英作

ベクトル間の内積を利用して効率的な非線形演算を実現するカーネル法は,1990年代後半におけるサポートベクトルマシン(SVM)の普及とともに広く知られるようになり,その後,様々な形で利用されるようになった.SVMの発案からカーネル法の普及に至るカーネル法の「そのとき」,そのアイデアの源流である「その前」,そしてその後の展開である「それから」について触れてみたい.

小特集 そのとき研究の歴史が動いた ――画像認識の発展の歴史を振り返って――   イメージベーストレンダリングのそのとき The “Moment” of Image-based Rendering

小特集 そのとき研究の歴史が動いた ――画像認識の発展の歴史を振り返って――
 
イメージベーストレンダリングのそのとき
The “Moment” of Image-based Rendering

p.1086
岡部孝弘

任意視点・任意照明環境における写実的な画像の生成は,コンピュータグラフィックス(CG)とコンピュータビジョン(CV)の学際的な研究課題の一つである.イメージベーストレンダリングは,画像から画像を直接生成することで,写実的な任意視点・任意照明画像の生成を行うものである.本稿では,イメージベーストレンダリング分野の金字塔的な研究として,SIGGRAPH2000で発表されたDebevecらの論文に焦点を当て,その時代背景やその後も含めて,イメージベーストレンダリングのそのときについて考える.

小特集 そのとき研究の歴史が動いた ――画像認識の発展の歴史を振り返って――   AlexNetのそのとき The “Moment” of AlexNet

小特集 そのとき研究の歴史が動いた ――画像認識の発展の歴史を振り返って――
 
AlexNetのそのとき
The “Moment” of AlexNet

p.1082
牛久祥孝

本稿では,深層学習の進化の契機となった要素を解説し,特にAlexNetの影響力に注目する.まず,初期の機械学習手法が直面していた課題を回顧する.そして深層学習の台頭を許した背景として,GPUの利用と大規模データセットの整備について焦点を当てる.そして,AlexNetの登場とその衝撃を詳述し,深層学習が注目を集めるきっかけとなった技術的影響について掘り下げる.

小特集 そのとき研究の歴史が動いた ――画像認識の発展の歴史を振り返って――   研究の「そのとき」を考える Thinking about the “Moment” of Research

小特集 そのとき研究の歴史が動いた ――画像認識の発展の歴史を振り返って――
 
研究の「そのとき」を考える
Thinking about the “Moment” of Research

p.1074
岩村雅一

研究を続けていると,多くの研究者に影響を与える「当たり」の研究に出会うことがある.そのような研究は,どうして当たったのであろうか? ともすれば研究内容だけに注目してしまいがちであるが,その理由の一端はそれを生み出した時代背景にあるのかもしれない.本小特集では,過去の「当たり」の研究がどのように生まれ,その後の研究シーンにどのような影響を与えたのかを,ゆかりのある研究者に解説して頂く.本稿では,その企画意図と「当たり」の研究テーマの生まれ方の一例を述べ,更に研究活動のライフサイクルという考え方を紹介する.

小特集 そのとき研究の歴史が動いた ――画像認識の発展の歴史を振り返って――   小特集編集にあたって Editorial Preface

小特集 そのとき研究の歴史が動いた ――画像認識の発展の歴史を振り返って――
 
小特集編集にあたって
Editorial Preface

p.1073
編集チームリーダー 黒川茂莉

特集 耐量子計算機暗号の最新動向   ハッシュ関数を用いた署名方式について Hash-based Signature Scheme

特集 耐量子計算機暗号の最新動向
 
ハッシュ関数を用いた署名方式について
Hash-based Signature Scheme

p.999
廣瀬勝一

ハッシュ関数を用いた署名方式は,RSA署名方式と同様,1970年代に基礎が確立され,その後の研究で改良が行われてきた.ハッシュ関数を用いた署名方式は,安全性の観点から最も信頼性の高い耐量子計算機暗号の一つと考えられており,現在,実用のための方式として,米国国立標準技術研究所(NIST)の二種類の推奨方式とNISTによる耐量子計算機暗号標準化プロセスで標準化候補アルゴリズムとなった一つの方式が存在する.本稿では,それらに共通する基本構造を中心に紹介し,それぞれの特徴について概観する.

特集 耐量子計算機暗号の最新動向   NIST標準化の格子暗号方式の紹介 Introduction to NIST-standardized Cryptography Based on Lattices

特集 耐量子計算機暗号の最新動向
 
NIST標準化の格子暗号方式の紹介
Introduction to NIST-standardized Cryptography Based on Lattices

p.982
安田雅哉

量子計算機の実用化に向けた研究開発が加速化する一方,量子計算機を用いた解読でも困難な耐量子計算機暗号の研究開発が活発化している.2022年7月に,米国標準技術研究所(NIST:National Institute of Standards and Technology)は耐量子計算機暗号の次世代標準方式を発表した.本稿では,標準化が決定した格子に基づく耐量子計算機暗号方式であるCRYSTALS-Kyber,CRYSTALS-Dilithium,FALCONの三つの方式の基本構成を概説する.

特集 耐量子計算機暗号の最新動向   現行の公開鍵暗号方式に対するShorのアルゴリズムの脅威 Threat of Shor’s Algorithm to Current Public Key Cryptography

特集 耐量子計算機暗号の最新動向
 
現行の公開鍵暗号方式に対するShorのアルゴリズムの脅威
Threat of Shor’s Algorithm to Current Public Key Cryptography

p.977
國廣 昇 高安 敦

RSA暗号やだ円曲線暗号は現在広く利用されている公開鍵暗号方式であり,情報社会の安全性の根幹を支える基盤技術となっている.これらの暗号方式が安全であるためには,それぞれ素因数分解やだ円曲線上の離散対数が効率的に計算できないことが必要となるが,Shorの量子アルゴリズムはこれらを多項式時間で計算できることが分かっている.問題の簡潔さから,素因数分解に対するShorのアルゴリズムは活発に議論されているが,それと比べてだ円曲線上の離散対数計算に関する研究はまだ発展途上である.そのため本稿では,だ円曲線上の離散対数計算を中心に,現行の公開鍵暗号方式に対するShorのアルゴリズムの脅威に関する結果を紹介する.