pp783
赤松幹之
生体計測データをよりどころにした生体現象理解の理論構築を目指して
生体計測の応用の歴史を振り返ると,生体計測が人々の大いなる期待に必ずしも応えられてこなかったことを認めざるを得ない.生体信号の悩みの一つであるその変動性を再考すると,生体機能維持のための冗長性が計測値の変動を生んでいることが示唆される.生体システムは様々なサブシステムから成っており,それらの補償的・協調的な機能発揮のために,生体計測値が不安定に見えたり,理論と相矛盾するような現象が計測されることがあると考えられる.単純化された理論に合うように生体計測データを処理してしまうのではなく,シミュレーション技術などを用いて,生体計測データをよりどころにした生体現象の理論の再構築が望まれる.