小特集 回路とシステムの研究を「社会実装」するまで
6. 頒布はシェアの一部 Maker Pro
Maker Pro:Selling Is a Part of Sharing
高須正和
成長する同人ハードウェア,その市場と担い手,現状と展望
いわゆる「ものづくり」は,加工のための設備や材料の入手性の点から,かつては製造業の大手企業や大学などの専門機関に所属しなければ現実的には着手ができなかった.しかし様々な社会状況の変化や技術の進歩により,個人や少人数のチームを含む社会の様々な階層の人たちでも,かなり高度な「ものづくり」を行うことが可能となってきた.このような,言わば「ものづくりの民主化」とも呼ぶべき現象は2012年頃から顕在化しており,メイカームーブメントとも呼ばれる(1).その一方で,産業としてのものづくりでは,もの(ハードウェア)の量産や販売も必要であるが,それらはいまだに,リソースを備えた大規模な組織に所属する専門家の分野であり,民主化されたとは言いがたい.本稿では,ものづくりにおける,このような専門家と,アマチュアの中間の立ち位置とも呼ぶべき「Maker Pro」という,ものづくりの様式について,その現状と可能性について考察する.