小特集 回路とシステムの研究を「社会実装」するまで   6. 頒布はシェアの一部 Maker Pro Maker Pro:Selling Is a Part of Sharing

小特集 回路とシステムの研究を「社会実装」するまで
 
6. 頒布はシェアの一部 Maker Pro
Maker Pro:Selling Is a Part of Sharing

p.1029
高須正和

成長する同人ハードウェア,その市場と担い手,現状と展望
 いわゆる「ものづくり」は,加工のための設備や材料の入手性の点から,かつては製造業の大手企業や大学などの専門機関に所属しなければ現実的には着手ができなかった.しかし様々な社会状況の変化や技術の進歩により,個人や少人数のチームを含む社会の様々な階層の人たちでも,かなり高度な「ものづくり」を行うことが可能となってきた.このような,言わば「ものづくりの民主化」とも呼ぶべき現象は2012年頃から顕在化しており,メイカームーブメントとも呼ばれる(1).その一方で,産業としてのものづくりでは,もの(ハードウェア)の量産や販売も必要であるが,それらはいまだに,リソースを備えた大規模な組織に所属する専門家の分野であり,民主化されたとは言いがたい.本稿では,ものづくりにおける,このような専門家と,アマチュアの中間の立ち位置とも呼ぶべき「Maker Pro」という,ものづくりの様式について,その現状と可能性について考察する.

小特集 回路とシステムの研究を「社会実装」するまで   7. 徹底的な分解と再構築から見えてくるもの What We Found on Complete Break Down and Reconstruction of Hardware?

小特集 回路とシステムの研究を「社会実装」するまで
 
7. 徹底的な分解と再構築から見えてくるもの
What We Found on Complete Break Down and Reconstruction of Hardware?

p.1034
秋田純一 高須正和

現代における研究の社会実装の在り方とは?
 コンピュータサイエンスの研究者であるAndrew “bunnie” Huang氏は,最初期のIoT製品であるChumbyを中国で量産するなど,研究を「世に出す」経験を多数試みている.その根底にあるのは,徹底的な分解と,その上での再構築のプロセスであり,また,設計・製造からマーケティング・財務まで,専門性の壁に阻まれがちな複数の分野を手を動かして作ることで解き明かしていく姿勢はまさに「社会実装」であり,様々な視点からの示唆に富む.本稿では,氏の著書「ハードウェアハッカー」の解説を通して,研究の社会実装について考察する.

小特集 回路とシステムの研究を「社会実装」するまで   小特集編集にあたって Editorial Preface

小特集 回路とシステムの研究を「社会実装」するまで
 
小特集編集にあたって
Editorial Preface

p.1001
編集チームリーダー 佐藤弘樹

小特集 回路とシステムの研究を「社会実装」するまで   1. 技術の「民主化」がもたらすもの What Does “Democratized Technology” Realize?

小特集 回路とシステムの研究を「社会実装」するまで
 
1. 技術の「民主化」がもたらすもの
What Does “Democratized Technology” Realize?

p.1002
秋田純一

メイカームーブメント:「技術」が「道具」となるためには?
 近年の高度かつ安価な設計ツールや加工技術の普及によって,誰もが「作り手」になり得るメイカームーブメントと呼ばれる世界的な潮流が起こっている.これはホビーの枠を超えてハードウェアスタートアップと呼ばれる起業にもつながり,従来型の産業構造を補完するものとして定着しつつある.本稿では,この潮流の背景にある「技術の民主化」とでも呼ぶべき現象について考察する.

小特集 回路とシステムの研究を「社会実装」するまで   2. 電子工作からエレクトロニクスへ ――今の時代の研究開発―― Electronics:From Hobby to Industries

小特集 回路とシステムの研究を「社会実装」するまで
 
2. 電子工作からエレクトロニクスへ
――今の時代の研究開発――
Electronics:From Hobby to Industries

p.1008
秋田純一

電子回路における産業と「ものづくり」
 古くは産業としてのエレクトロニクスとホビーとしての電子工作は不可分であったが,近年の回路技術の高度化に伴い,両者は近くて遠い関係となり,また,いわゆる「ものづくり離れ」が叫ばれるようになった.ところがオープンソースを起点とする様々な技術面,経済面,社会情勢の変化から,再び両者は密接に関係し,新たなイノベーションを生み出しつつある.本稿では,これらの歴史と現状を俯瞰し,議論する.