佐藤健一
光ネットワーク技術が日本を救う
これまでの通信サービスに加え,近年急激に成長しているデータセンター,クラウド,OTTを含むコンテンツプロバイダがもたらすインターネット環境の変化を考察する.これまでの通信キャリヤやOTT/コンテンツプロバイダが発展の基盤としてきた,また最大限の恩恵の源泉である光技術,半導体技術の進展の動向を論じる.これに伴う通信産業のパラダイム変化と将来の光ネットワーク技術の役割を論じる.
光ネットワーク技術が日本を救う
これまでの通信サービスに加え,近年急激に成長しているデータセンター,クラウド,OTTを含むコンテンツプロバイダがもたらすインターネット環境の変化を考察する.これまでの通信キャリヤやOTT/コンテンツプロバイダが発展の基盤としてきた,また最大限の恩恵の源泉である光技術,半導体技術の進展の動向を論じる.これに伴う通信産業のパラダイム変化と将来の光ネットワーク技術の役割を論じる.
設計と製造の分業における,光通信デバイスと半導体集積回路との異同とは
日本電子産業の国内生産金額はピークの半分以下に落ち込み,貿易収支は赤字に転落した.転機は1985年である.通信自由化と東西冷戦の「終わりの始まり」は,世界の産業配置を変える.特に設計と製造の分業がグローバルに進展した.しかし日本企業は,この分業を嫌う.これが日本電子産業凋落の原因の一つとなる.後半では,設計と製造の分業における,半導体集積回路と光通信デバイスの異同を検討する.光通信デバイスには比例縮小則は当てはまらず,両者の違いは少なくない.しかし設計ツールの重要性など,共通の注意点もある.
最終顧客からの声──データセンターの現場から──
データセンターに設置されるサーバは日々進化を続け,数年周期で目覚ましい進化を遂げている.最近では,10~100万台以上のサーバを運用するデータセンター事業者とそうでない事業者では,用いられるサーバの種類にも変化が見え始めている.
本稿では,サーバの進化とネットワークの広帯域化が進むデータセンターネットワークにおける光デバイスへの期待について,データセンターが抱える技術的ジレンマを背景として紹介していく.
光デバイスが切り開く新しい社会基盤
IoT時代においては,スマートフォンを用いた従来サービスの高度化に加え,あらゆる産業においてセンサを活用したビッグデータサービスの進展により,無線トラヒックの急増とともにその多様化が予想されている.そこで,’ひと’や’もの’へのラストリーチを担う無線アクセスと,それを支える光ネットワークを融合する新たなアクセスネットワークアーキテクチャを構築する必要がある.その実現に向けて,コヒーレント光送受信機や広帯域周波数変換器などの光・電子融合デバイスがブレークスルーを実現するキーデバイスとして期待される.
次世代データセンターのための光配線技術
シリコンフォトニクスデバイスの最新動向として,光トランシーバを構成する要素部品であるSi光導波路,Si光変調器,Ge受光器及び光源集積に関して述べる.小形・低消費電力化が重要な指標になっており,各デバイスの動向と課題についてまとめた.更に,これらの部品を集積化した光トランシーバの一つである光I/Oコア及びシリコン光インターポーザに関して述べる.光I/Oコアに関しては,これまでの光モジュールへの適用だけではなく,ボード内やLSI周辺への適用可能性が検討されている.シリコン光インターポーザに関しては,実装やシステム的な観点からもLSIチップとの融合が必要であり,今後の更なる研究開発が重要になると考えられる.
ディスアグリゲーションによる消費電力の飛躍的減少の可能性
近年,データセンターは,インターネットコンテンツプロバイダ等の著しい進展により,ますます高度化し,その役割は,人工知能などを駆使したIoTやビッグデータへの期待ともあいまって,情報通信インフラの根幹として,もはや社会にとって不可欠なものとなった.ところが,今後の技術展望では,ムーアの法則の終えんがデータセンター技術の発展に大きな影を落としている.本稿では,2030年頃のデータセンター技術,光インタコネクト技術を展望し,光スイッチの重要性を唱える.光スイッチを次世代データセンターに導入するためには,新しい光インタコネクト技術に加え,ディスアグリゲーションというキーワードに代表される新しいコンピューティングの創出が不可欠であるが,そのためには,アーキテクチャからデバイスまでの垂直融合技術開発体制とそれを持続可能にするエコシステムの構築が急がれる.