小特集 4. 完全準同形暗号の最近の研究動向 Recent Research Topics on Fully Homomorphic Encryption

pp1176
縫田光司

複雑な構造をシンプルな構造に落とし込む──新たなる突破口──
 暗号化状態のままであらゆるデータ演算を可能とする完全準同形暗号技術に対する期待は大きい.従来の完全準同形暗号の構成法は主に二つの原理へと分類されるが,動作時間など効率面の抜本的改善や運用上の問題の軽減のため,従来とは異なる原理に基づく完全準同形暗号の実現に向けた研究も進められている.それらの研究は残念ながらいまだ成功に至っていないものの,今後の研究の進展を祈念する意味も込めて,本稿ではそうした新たな完全準同形暗号の構成原理に関する研究動向について概説する.