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唐沢好男
電波伝搬モデルの源流から潮流までを俯瞰する
自然現象の解明に奮闘し,通信システム設計に有用な電波伝搬モデル構築や研究指針を示した先人たちの足跡を訪ねてみたい.ここに取り上げる例は,いずれも,我が国の先達がその構築に主導的役割を担い,かつ,今日の無線通信の基礎となっている伝搬研究とその結晶である伝搬モデルである.具体的には,移動伝搬理論を支える確率分布:仲上n分布(今日の仲上・ライス分布)と仲上m分布を生み出した仲上稔氏の研究,陸上移動伝搬の概念構築と回線設計手法を打ち立てた奥村善久氏の研究開発,広帯域移動通信時代を予測してアンテナ(A)・伝搬(P)・システム(S)の融合研究(A・P・S三位一体研究)を提唱した池上文夫氏の思想,そしてもう一つの無線通信の重要課題,降雨減衰のモデル化に取り組んだ森田和夫氏の研究開発を取り上げる.