岡野原大輔
IT による仕組みの再構築は人類に何をもたらすか
IT による仕組みの再構築は人類に何をもたらすか
ディジタルデータの利活用が最も期待されるのは医療健康
複雑な構造をシンプルな構造に落とし込む──新たなる突破口──
暗号化状態のままであらゆるデータ演算を可能とする完全準同形暗号技術に対する期待は大きい.従来の完全準同形暗号の構成法は主に二つの原理へと分類されるが,動作時間など効率面の抜本的改善や運用上の問題の軽減のため,従来とは異なる原理に基づく完全準同形暗号の実現に向けた研究も進められている.それらの研究は残念ながらいまだ成功に至っていないものの,今後の研究の進展を祈念する意味も込めて,本稿ではそうした新たな完全準同形暗号の構成原理に関する研究動向について概説する.
情報の機密性保護と利活用の両立による可能性
近年,スマートフォンやタブレット端末の普及により,簡単に情報検索ができるようになった.クラウド利用も身近になり,ビッグデータ解析による新しい情報利活用社会に今後進化することが予想される.より便利な情報社会に進化する一方で,データの機密性を保護する需要が急速に求められている.準同形暗号は暗号化したまま加算や乗算などの処理が可能な暗号技術で,クラウドに集まるデータの機密性保護と利活用の両立を可能とする暗号技術として注目を集めている.特に,暗号化したまま任意の演算が可能な完全準同形暗号は,2009年のGentryによる提案以降,技術開発と実応用の両面で活発に研究されている.そこで本稿では,準同形暗号の応用例を幾つか紹介する.
暗号化したまま処理するための理論的な構成
完全準同形暗号(FHE)とは,暗号化したままデータの処理を可能にする暗号技術であり,概念として40年ほど前に提案されたが長い間実現方法が見つからなかった.しかし2009年にスタンフォード大学のGentryが初めて構成法を考案し大躍進を果たした.本稿では,Gentryの2009年の論文と後続研究における構成方法の主なアイデアを紹介する.特に次の3点に焦点を絞る.まずは低次数関数の準同形評価に対応する,いわゆるSomewhat準同形暗号(SHE)方式の構成について述べる.次にGentryの提案したSHEからFHEへの変換手法・ブートストラップの説明を行う.そして最後に,ブートストラップよりコストの低いモジュラス切換手法について紹介する.
複雑な構造をシンプルな構造に落とし込む──新たなる突破口──
暗号化状態のままであらゆるデータ演算を可能とする完全準同形暗号技術に対する期待は大きい.従来の完全準同形暗号の構成法は主に二つの原理へと分類されるが,動作時間など効率面の抜本的改善や運用上の問題の軽減のため,従来とは異なる原理に基づく完全準同形暗号の実現に向けた研究も進められている.それらの研究は残念ながらいまだ成功に至っていないものの,今後の研究の進展を祈念する意味も込めて,本稿ではそうした新たな完全準同形暗号の構成原理に関する研究動向について概説する.
情報の機密性保護と利活用の両立による可能性
近年,スマートフォンやタブレット端末の普及により,簡単に情報検索ができるようになった.クラウド利用も身近になり,ビッグデータ解析による新しい情報利活用社会に今後進化することが予想される.より便利な情報社会に進化する一方で,データの機密性を保護する需要が急速に求められている.準同形暗号は暗号化したまま加算や乗算などの処理が可能な暗号技術で,クラウドに集まるデータの機密性保護と利活用の両立を可能とする暗号技術として注目を集めている.特に,暗号化したまま任意の演算が可能な完全準同形暗号は,2009年のGentryによる提案以降,技術開発と実応用の両面で活発に研究されている.そこで本稿では,準同形暗号の応用例を幾つか紹介する.