秋田純一
ものづくり分野で花開く現代のルネッサンス
VDEC設立からの活動により,大学・高専等において集積回路を実際に設計・試作・動作させるという教育研究の道具立てが確立された.その一方,設計製造技術の高度化に伴って,本来システム具現化の道具である集積回路が,本来必要とするユーザの手に届かなくなりつつある現実もある.本稿では,VDECの活動を踏まえ,集積回路が真の道具となるための方策と展望について述べる.
ものづくり分野で花開く現代のルネッサンス
VDEC設立からの活動により,大学・高専等において集積回路を実際に設計・試作・動作させるという教育研究の道具立てが確立された.その一方,設計製造技術の高度化に伴って,本来システム具現化の道具である集積回路が,本来必要とするユーザの手に届かなくなりつつある現実もある.本稿では,VDECの活動を踏まえ,集積回路が真の道具となるための方策と展望について述べる.
FPGA に頼らずにチップ実装を行う意味とは
VDECができたおかげで,日本のアーキテクチャ研究もようやく実際のチップという基盤に基づいた研究ができるようになった.実際のチップ作成というだけでなく,現実的なCADを用いてアイデアの評価が可能になったことはアーキテクチャの研究面で大きな意義があった.しかし,残念なことにVDECで開発されるチップの中でアーキテクチャ研究によるものの占める割合は必ずしも多くない.本稿ではこの理由を説明するとともに,アーキテクチャ研究でチップ実装が役に立つ例として,我々の開発してきた実装例を幾つか紹介する.
設計自動化研究を飛躍させた商用設計ツールのインパクト
VDECの登場以前,日本の大学におけるEDA(Electrical Design Automation)研究は小さなサンプル回路を例題とする場合が多く,実回路への適用にハードルがある場合が多かった.VDEC登場により状況は一変する.大学はVDECの商用設計ツール群(論理シミュレータ,回路シミュレータ,論理合成ツール,配置配線ツール等)や設計ライブラリを利用することができ,アイデアを具体的に評価する手段を得た.これにより実規模回路設計が容易となった.その結果,大学におけるEDA研究も大きく飛躍した.本稿では,筆者らの近年の研究例を幾つか取り上げ,日本の大学におけるEDA技術の一部を概観する.
自動でチップが設計できる,ノウハウが詰まった設計フロー
集積回路を設計するには,そのプロセスの設計ルールのみならず,様々なツールの使い方に精通しなければならない.VDEC発足当初からディジタル設計の自動化を目指し,Makefileを活用した設計フローの構築を行ってきた.このフローにより,0.18μmから28nmまでの各種のプロセスで初心者(学生)が簡単にLSIの設計を行うことができる.本稿では,このフローの詳細と検証・測定環境の構築を概説する.
最終顧客からの声──データセンターの現場から──
データセンターに設置されるサーバは日々進化を続け,数年周期で目覚ましい進化を遂げている.最近では,10~100万台以上のサーバを運用するデータセンター事業者とそうでない事業者では,用いられるサーバの種類にも変化が見え始めている.
本稿では,サーバの進化とネットワークの広帯域化が進むデータセンターネットワークにおける光デバイスへの期待について,データセンターが抱える技術的ジレンマを背景として紹介していく.
光デバイスが切り開く新しい社会基盤
IoT時代においては,スマートフォンを用いた従来サービスの高度化に加え,あらゆる産業においてセンサを活用したビッグデータサービスの進展により,無線トラヒックの急増とともにその多様化が予想されている.そこで,’ひと’や’もの’へのラストリーチを担う無線アクセスと,それを支える光ネットワークを融合する新たなアクセスネットワークアーキテクチャを構築する必要がある.その実現に向けて,コヒーレント光送受信機や広帯域周波数変換器などの光・電子融合デバイスがブレークスルーを実現するキーデバイスとして期待される.
次世代データセンターのための光配線技術
シリコンフォトニクスデバイスの最新動向として,光トランシーバを構成する要素部品であるSi光導波路,Si光変調器,Ge受光器及び光源集積に関して述べる.小形・低消費電力化が重要な指標になっており,各デバイスの動向と課題についてまとめた.更に,これらの部品を集積化した光トランシーバの一つである光I/Oコア及びシリコン光インターポーザに関して述べる.光I/Oコアに関しては,これまでの光モジュールへの適用だけではなく,ボード内やLSI周辺への適用可能性が検討されている.シリコン光インターポーザに関しては,実装やシステム的な観点からもLSIチップとの融合が必要であり,今後の更なる研究開発が重要になると考えられる.
ディスアグリゲーションによる消費電力の飛躍的減少の可能性
近年,データセンターは,インターネットコンテンツプロバイダ等の著しい進展により,ますます高度化し,その役割は,人工知能などを駆使したIoTやビッグデータへの期待ともあいまって,情報通信インフラの根幹として,もはや社会にとって不可欠なものとなった.ところが,今後の技術展望では,ムーアの法則の終えんがデータセンター技術の発展に大きな影を落としている.本稿では,2030年頃のデータセンター技術,光インタコネクト技術を展望し,光スイッチの重要性を唱える.光スイッチを次世代データセンターに導入するためには,新しい光インタコネクト技術に加え,ディスアグリゲーションというキーワードに代表される新しいコンピューティングの創出が不可欠であるが,そのためには,アーキテクチャからデバイスまでの垂直融合技術開発体制とそれを持続可能にするエコシステムの構築が急がれる.
光ネットワーク技術が日本を救う
これまでの通信サービスに加え,近年急激に成長しているデータセンター,クラウド,OTTを含むコンテンツプロバイダがもたらすインターネット環境の変化を考察する.これまでの通信キャリヤやOTT/コンテンツプロバイダが発展の基盤としてきた,また最大限の恩恵の源泉である光技術,半導体技術の進展の動向を論じる.これに伴う通信産業のパラダイム変化と将来の光ネットワーク技術の役割を論じる.